――SDN/NFV分野でのビジネスの進捗状況について教えてください。
シャオ SDN分野においてファーウェイは、商用サービスをいち早く提供することに成功しています。グローバルで同業他社より先に進んでいると評価され、2016年第2四半期までに、30プロジェクト以上の契約を結ぶことができました。その中には、クラウドB2BやクラウドVPNなどが含まれています。
NFV分野についていうと、まず数多くの製品群を取り揃えていることが我々の特徴として挙げられます。EPC(Evolved Packet Core)に関しては「Cloud Edge」というブランドで製品を用意しており、2016年第2四半期までにグローバルでトップレベルの通信事業者、例えばドイツテレコムやボーダフォン、テレフォニカ、チャイナ・モバイルなどと50以上のトライアルとPoC(Proof-of-Concept)を実施しています。また、商用サービスの初期段階の研修も行っています。すでに商用契約を結んだものも24件あり、その中には仮想化したEPC以外にサービスチェイニング分野のものもあります。
EPC以外の分野には、IMS(IP Multimedia Subsystem)やPCRF(Policy and Charging Rule Function)、DRA(Diameter Routing Agent)が含まれますが、2016年第2四半期までに63件の契約を結ぶことができました。ですから、2016年第2四半期までのNFV分野の契約数は90件ほどあり、これはグローバルで見てもトップレベルだと思います。
NFVI(NFV Infrastructure)の分野については、2016年の第2四半期までにテレコム・クラウド・データセンターの契約を68件結ぶことができました。NFVI単独で構築する契約も10プロジェクト以上あり、これもグローバルでトップレベルだと自負しています。
華為技術日本(ファーウェイ・ジャパン) マーケティング&ソリューションセールス本部 ソリューションプロダクトマネージメント部 部長の邵禹(シャオ・ユウ)氏 |
グローバルで通信事業者がファーウェイ製品とサービスを活用して躍進――具体的な導入事例があると伺いました。
シャオ いくつか紹介します。1つはボーダフォン・イタリアで、クラウド化したVoLTEネットワークの商用化を実現しました。ファーウェイは製品を供給するだけでなく、インテグレーテッドサービスも提供しています。それによって、ボーダフォン・イタリアは従来のサービスと新しいサービスを1つのグランドプラットフォームに搭載することに成功しました。しかもわずか5カ月で行うことができたのです。
最近、商用化を実現したインドネシアの大手通信事業者の事例もあります。クラウドEPCの商用プロジェクトで、グローバルでも最大規模のものです。商用化した際、クラウドEPCにトラフィックが一気に流れたのですが、ファーウェイの構築したネットワークはそれに耐えられることを証明しました。
仮想化したEPCのネットワークエレメントのソフトウェアアーキテクチャーをクラウドの特徴に合わせて全面的に改良したのですが、それを大規模の商用化で実現できたのはファーウェイだけです。
同業他社のNFVは、ソフトウェアを仮想マシンに載せることに留まり、大きな改善点がないため、その価値を本当に生かすところまでまだ到達していません。しかし、NFV用の新しいアーキテクチャーを用意するファーウェイは違います。
3つ目の事例はイギリスのスカイです。スカイは動画サービスを提供するプロバイダーであり、ビデオの最適化をファーウェイがサポートしました。
NFVを活用したサービスチェイニングによりトラフィックのコーディネーションを行い、トラフィックの帯域幅の節約につなげました。その結果、従来は新しいサービスを開始するまでに半年から1年かかっていましたが、現在は2週間から4週間で新しいサービスを提供できるようになりました。
4つ目はクラウドB2Bの事例です。チャイナ・ユニコム上海の法人向け専用ラインをダイナミックに調整してチューニングが可能になった事例で、通信事業者が専用ラインの品質を見える化したものです。顧客にプラスアルファーのサービスを提供したい場合、クラウド上でいつでもサービスを乗せることが可能になりました。
法人顧客が新たにサービスを付け加えたいという場合、ネット通販サイトを利用する感覚で新サービスを購入できるのです。従来、1つのサービスを顧客に提供するためには2カ月以上掛かっていたものが、現在は数分で行えるようになりました。それにより、中小企業の顧客が10倍近く増えたそうです。
――なぜ、ファーウェイは先進的な事例をいくつも有することができたのでしょうか。
シャオ それにはいくつかの理由があります。1つはファーウェイが標準化分野での研究開発にとても大きな予算をつぎ込んでいることです。社会貢献という意味では、NFV分野で中心的な標準化団体であるETSI(European Telecommunications Standards Institute:欧州電気通信標準化機構)のNFV ISG(Industry Specification Group)の研究開発に大きな予算をつぎ込んでバックアップしています。また、ETSIのNFV ISGにはファーウェイから1人のワーキンググループのチェアマンと2人のバイスチェアマンが就任しています。そして現段階では1977項目の提案を受け入れていただいており、その数は断トツの1位です。
NFV分野で中心となる標準化団体で、ファーウェイはとても重要なポジションにあり、リーダーシップを取っています。業界の流れを作り出しているので、先進的な事例をいくつも生み出すことが可能なのです。
――日本国内でのNFV分野の進捗状況はいかがでしょうか。
シャオ 国内でも大きな進捗がありました。2015年にある通信事業者とSDN/NFVの商用契約を取り交わしたのです。契約内容には、VNFやNFVI、SDNコントローラなど重要な技術が盛り込まれています。