ビジネスチャットの導入を検討している企業には大きく2種類ある。1つは、すでにLINEなどのコンシューマー向けチャットが社内に広まっており、管理・セキュリティ上の課題を解決するため、ビジネスチャットに移行しようと考えている企業である。
もう1つは、社内コミュニケーション環境の改善・改革を行いたいと考えており、そのツールの1つの候補としてビジネスチャットを検討している企業だ。
前者の場合、チャットを業務に活用するメリットは理解しているし、実際そのメリットをすでに享受している。あとは、どのビジネスチャットを選ぶか、という問題だけだ。
一方、後者の場合、まずは自社に本当に必要なのがビジネスチャットなのかどうかを判断しなければならない。
「UCか?ビジネスチャットか?」は間違いビジネスチャットベンダー各社によると、ビジネスチャットと比較検討されることが多いツールの筆頭が、UC(ユニファイドコミュニケーション)だという。マイクロソフトの「Skype for Business(旧Lync)」などが代表的なUCソリューションだ。
ビジネスチャットに分類される製品・サービスは、テキストでのコミュニケーションを主体にしている(ビデオ通話機能などを備えているビジネスチャットもある)。一方、UCはテキストだけではなく、音声、ビデオ、デスクトップ共有などのコミュニケーション機能も統合的に備えている。「ならば、より多機能なUCを導入したほうがいいのでは」と考えるのも自然なように思える。
しかし、ビジネスチャットとUCは、似ているようでいて、だいぶ違うツールだ。
まず決定的に違うのは、UCの場合、テキストチャットは補完的なコミュニケーション手段として位置付けられているケースがほとんどな点だ。これに対して、ビジネスチャットはテキストが主役。当然、テキストチャットに関連する機能は、UCよりもビジネスチャットのほうが充実している。
また、UCは必要な人をその都度選択してコミュニケーションするツールという性格が強い。一方、ビジネスチャットは特定メンバーが継続的にコミュニケーションするのにも適している。部署やプロジェクト単位でグループチャット用のルームを作り、その中で継続的に業務連絡や情報共有を行えるからだ。
代替する既存ツールも違っている。UCは主に電話の代替手段として導入されているのに対して、ビジネスチャットは主に社内メールを代替する。
さらにいえば、ユーザビリティにも違いがある。UCの課題として操作性がよく挙がる一方、LINEがここまで普及した今、ITリテラシーの高くない人でもビジネスチャットなら使いこなせる。
このようにテキストチャット機能を同様に備えていても、UCとビジネスチャットはその目的や性格が異なったツールだ。本特集のタイトルは「LINE以上、UC未満の“使える”ビジネスチャットの選び方」だが、ビジネスチャットを機能的に「UC未満」と捉えるのは間違い。「UC未満」といえるのは、導入や普及のハードルの低さだ。「LINEのようなコミュニケーションツールが欲しい」と考えているのであれば、迷わずUCではなくビジネスチャットを選ぶべきである。