――代表取締役を2人体制にした理由とそれぞれの役割を教えてください。

野崎　日本市場はエリクソンにとって重要度が高く、売上も常に世界の3位に入ります。技術の先進性も、消費者のモバイルサービスに対する期待値と要求水準も非常に高いため、エリクソン自身が学べることも、とても多い市場だと捉えています。

そうした中では、お客様の声に耳を傾け、より集中してビジネスを行う必要があります。ヨッシーと私は担当するお客様が分かれており、それぞれがお客様の声を的確かつ迅速に本社や開発部門にフィードバックできる体制にしました。

コーヘン　私がソフトバンクグループを、野崎がその他の日本でのビジネスを担当しています。ソフトバンクと我々の関係は長く、私は5年前から同社のビジネスに関わっています。私の具体的な役割は、エリクソンのグローバルな機能と体制を活用してソフトバンクの日本およびグローバルのビジネスをサポートすることです。

2人体制にすることで、それぞれのお客様に最適な対応ができます。また、お客様の情報を守るファイアウォールを組織レベルで構築できているということでもあります。

代表取締役社長・戦略事業担当の野崎哲氏（左）と、代表取締役社長・ソフトバンク事業 グローバル統括本部のヨッシー・コーヘン氏

ユーザー体験を最大化する

――日本のビジネスにおいて最も注力する点は何でしょうか。

コーヘン　新技術・機能の投入によって、高品質なネットワークを構築することです。

日本は非常に多くの人がモバイルでチャットやビデオ等の様々なアプリを使います。ここから、量が多いだけでなく、密度が濃いというトラフィックの特徴が生まれています。ここに、高品質を追求するという日本人のもう1つの特徴が組み合わさることで、世界でも最高品質のネットワーク構築が求められています。

――通信事業者は差別化要素としてネットワーク品質を重要視しています。

野崎　品質はもちろんですが、加入者がどこにいても快適にサービスを受けることができる、ネットワーク全体としての完成度こそが重要だと考えています。つまり、我々は高度なユーザー体験とネットワークパフォーマンスの両方の価値を提供していかなければなりません。

これに関して様々な取り組みを行っています。例えば、世界中の主要な端末／OS、チップセットのメーカーと協力し、端末とネットワークの組み合わせで最適なパフォーマンスが出せるように検証を行っています。我々はどのメーカーとも中立的に付き合いができる立場にあり、端末の発売前からこうした検証が行えることが強みの1つです。

もう1つ、エリクソンは世界70カ国以上で190件以上のLTE関連ビジネスに関わっており、様々な事業者からのフィードバックが得られます。そこで直面した問題を開発部門にフィードバックして、我々が独自に問題を解決するための機能を開発し、それを世界中のお客様に展開できます。これらの取り組みは、グローバルに事業を展開している我々ならではの強みです。

――国内事業者の動きとして、ドコモが先頃サービス提供を始めたVoLTEと、NFVがキーワードです。この2つがもたらすメリットと、その意味をどう考えていますか。

野崎　VoLTEは通話接続時間の短縮、高品質な音声の提供といったそれ自体のメリットもありますが、やはり、音声とデータネットワークの融合が鍵になります。データ通信網にキャリアグレードの音声サービスをうまく融合させなければ、加入者が満足するVoLTEは提供できません。その意味では、VoLTEもネットワークの完成度を向上させるものと言えます。

コーヘン　次世代の音声システムを提供するということだけでなく、VoLTEによってエンドユーザーによりよい使用感を提供することも考えています。エンドツーエンドでQoSを見て、高いユーザー体験を実現することで、HD品質の音声・ビデオが導入されていきます。

これは、今後のアプリ開発にも影響するでしょう。VoLTEによって周波数の利用効率も高まります。

野崎　NFVと仮想化は、加入者が自分の使いたいネットワークを利用できるようにするための技術だと考えています。端末が携帯電話からスマートフォンにシフトしたことで、アプリの分野では、ユーザー1人ひとりが自ら好きなものを選んで使えるようになりました。仮想化によって、ネットワークサービスにおいても同じことが実現します。