昨今、大きな注目を集めるSDNだが、ユーザー企業のネットワーク担当者はこの技術トレンドにどう向き合えばいいのだろうか。
総務省は2014年3月13日、ネットワーク仮想化技術をテーマにしたイベント「ネットワークアプリケーション技術に関するシンポジウム」を都内で開催した。このなかで、「企業におけるネットワーク仮想化の将来像とマイグレーション」と題し、野村総合研究所(NRI) 上級コンサルタントの木下貴史氏による特別講演が行われた。
木下氏は今回の講演にあたって、総務省の協力のもと、企業で実際にネットワークを運用している人々などと意見交換を行ったという。それで浮かび上がってきたのは、ベンダー側が発信する“過大な”SDNのメリットとは異なる、ユーザー企業から見た“等身大”のSDNへの期待や課題だ。
SDNを導入/検討中のユーザー企業4社、それぞれの理由と期待
まず木下氏が紹介したのは、すでにSDNを導入した企業、あるいはSDN導入を検討している企業4社のSDNを導入/検討する理由だ。
1社目は、構内ネットワークにすでにSDNを導入している企業のケースである。ネットワーク構成の簡単化と、設定・運用負荷の軽減が急務であったことからSDNを導入した。SDN導入後は、「余裕を持って日々のオペレーションができている」という。
ネットワークの管理負荷を減らすためのソリューションはSDN以外にも存在するが、SDNを選択したのは、「SDNのコンセプトはわかりやすく、(自社の)ニーズに対する適合性は明確だった」からだという。さらに将来、SDNにより、既存ネットワーク上に多様な目的別ネットワークを構築できることへの期待もあった。
2社目は、法人サービス用データセンターへのSDNの適用を始めている海外の通信キャリアのケースである。キャリアにおけるネットワーク仮想化というと、SDNよりもNFVへの注目のほうが最近は高くなっているが、同社はNFVの導入はまだ開始していない。
法人サービス用のデータセンターにSDNを採用したのは、第一に顧客からの要望があったからだ。クラウドや仮想化技術が広まるなか、「ネットワーク機能もソフトウェア的に制御できて変化に対応できることが、今後の法人システムにおいて必須の機能となっていく」と同社は考えている。
また、仮想化データセンター内およびデータセンター間向けの製品・技術として、SDNは「十分に実用的な段階に入っている」という判断もあった。