2011年10月に発表した「グローバルクラウドビジョン」を旗印に、通信事業者ならではの「グローバルトータルICTアウトソーシング」を目指すNTTコミュニケーションズ。代表取締役社長の有馬彰氏は、このグローバルクラウドビジョンのさらなる価値向上に向けた取り組みについて基調講演で語った。
有馬氏が挙げた取り組みは、次の3つのポイントから構成される。(1)通信事業者ならではのクラウドの展開、(2)グローバルでのサービス提供力の強化、(3)ネットワーク仮想化技術を用いた新たな付加価値の提供である。ここでは、(3)のネットワーク仮想化技術に絞って、NTTコムの今後の戦略を紹介していくことにしよう。
ネットワーク仮想化で「あたかも1つのデータセンターに」
OpenFlow等のネットワーク仮想化技術を活用した企業向けクラウドサービス「Bizホスティング Enterprise Cloud」を昨年6月から提供しているNTTコム。今年6月には、ネットワークセグメントやIPアドレスを変更せずに、オンプレミスのシステムをクラウド上にマイグレーションできる「オンプレミス接続サービス」も、ネットワーク仮想化技術により実現した。NTTコムによれば、ともに「世界初」のサービスだ。
このように、いち早く自社サービスの付加価値向上にネットワーク仮想化技術を取り入れてきたNTTコムだが、今後もリードし続けるべく、有馬氏はこれから提供予定の新サービスを次々に明らかにした。
まずは、2014年4月から提供予定の「コロケーション接続オプション」だ。これは、クラウドとコロケーションのハイブリッドを実現するもの。「クラウドにできない、しないほうがいいシステムは、私どものデータセンターにコロケーションしていただくケースが多くなる」と有馬氏はいうが、そうしたクラウド以外のシステムとクラウドを「ネットワーク仮想化技術を使って、まったく同じIPアドレス空間とネットワークセグメントで利用できる」という。
クラウドとコロケーションのハイブリッドをネットワーク仮想化により実現する「コロケーション接続オプション」 |
このコロケーション接続オプションは、同一データセンター内にあるクラウドとコロケーションのハイブリッドを可能にするものだが、さらにはクラウドサービスを提供していない別のデータセンターとのハイブリッドも可能にしていくとのこと。「データセンター間の回線費用の負担なしに、あたかも1つのデータセンターのようになる」と有馬氏は説明した。
データセンター間でのクラウドとコロケーションの接続も可能に |
さらに従来、「マニュアルでやっていたため、10日ほどかかっていた」というクラウドとネットワークの接続についても、ネットワーク仮想化技術の活用により、来年夏にユーザー自身がカスタマーポータル経由で自動的に接続できるようにするという。