<連載>フィジカルAIの通信・システム要件フィジカルAI、日本の勝ち筋 阪大・原田教授「汎用化へ、用途別実装を急げ」 

フィジカルAIが急速な進化を遂げ、ロボットに新たな可能性が開けている。人手不足が深刻化する日本は、この技術を産業や社会にどう実装し、米中に並ぶ「第三極」を目指すべきなのか。経産省のAIロボティクス戦略検討会議の委員長を務める大阪大学の原田研介教授に、AIロボットの最新動向と実装のロードマップ、日本の勝ち筋を聞いた。

大阪大学 大学院基礎工学研究科 教授 原田研介氏

大阪大学 大学院基礎工学研究科 教授 原田研介氏

――AIロボットをはじめとするフィジカルAIへの期待が急速に高まっています。

原田 私の専門であるロボットによるマニピュレーション(物体操作)の分野でも、重要なイノベーションが現在進行形で起こっています。

ボトルの蓋を開けるといった動作は、人にとっては簡単ですが、ロボットにさせるのは非常に大変です。従来は、頑張ってコーディングしたり、ティーチング(ロボットに1つひとつの動作を教え込む作業)したりする必要がありました。

しかしAIモデルの登場以降、大きな変化が起き、今は「模倣学習に基づくロボット基盤モデル」が基本になっています。

模倣学習では、人のオペレーターがロボットを遠隔操作して作業を行い、そのときの動作データとロボットが見た映像データを取得します。これを何十回か繰り返すと、ロボットがその作業をできるようになるのです。しかも、環境が少し変わっても対応可能で、こうしたことは今までできませんでした。

AIモデルの重要な特徴の1つに「汎化」があります。少し大雑把にいうと、ある位置にあるモノを取る動作と、別の位置にあるモノを取る動作のデータを与えると、その中間の位置にあるモノも取れるようになるのが汎化です。いろいろなバリエーションのデータを大量に取得することで、その範囲の中で新しい動作を作れるのです。

この汎化によって、大量のデータがあれば、汎用ロボットを実現できるのではないか、という期待が持てるようになりました。この期待のもと、皆がこぞってデータを集めているというのがフィジカルAIの現在地です。

日本はまだまだ機械工学出身の研究者が多いですが、米国や中国ではコンピューターサイエンス出身のA I研究者がフィジカルA I分野に続々と参入してきています。

原田研介(はらだ・けんすけ)氏

1997年、京都大学 大学院工学研究科 機械工学専攻 博士後期課程修了。広島大学工学部 助手、スタンフォード大学 コンピューターサイエンス学科 訪問研究員、産業技術総合研究所 知能システム研究部門 研究グループ長などを経て、2016 年から現職。産業技術総合研究所 クロスアポイントメントフェローを兼務するほか、経済産業省 AIロボティクス戦略検討会議 委員長、ロボット革命評議会 マニピュレーションWG 委員長なども務める。IEEE フェロー。博士(工学)

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