多様なM2Mアプリケーションの開発をいかにして促すか。これはM2Mビジネスの発展に直結する課題だ。アプリ開発のハードルを下げるための取り組みが、基本機能のメニュー化(モジュール化)だ。
M2Mの用途はさまざまあるが、多くのケースに共通した汎用的な機能が存在する。例えば、データ収集の仕方は業種や企業を超えていくつかのパターンに集約できるし、しきい値を超えた場合にアラームを発報する、異常を検出した場合に管理者にデータを通知するなどだ。
こうした「基本的な機能を予め用意することで、お客様にM2Mビジネスを考えるヒントにしてもらう」と話すのはドコモの高原氏だ。M2Mプラットフォームの上位に「アプリケーションイネーブラー」と呼ぶ機能を設け、M2Mのベーシックな機能をメニュー化して提供する考えだ。
また、アプリケーション開発に必須となるのがパートナーとの連携だ。富士通の大澤氏はこう指摘する。「我々はお客様のIT部門には強い(パイプがある)が、M2Mは商品企画などの事業部門が主導するもの。そうした領分に強みを持つパートナーと一緒に開拓しなければ、新たなM2Mビジネスは生まれない」
パートナーが不足する機能を、富士通がM2Mプラットフォームから提供。パートナーが特定業界向けの端末やアプリ開発を行うというモデルで顧客を開拓している。
一例が、ニシム電子と富士通が共同で開発したM2M遠隔監視サービスだ。2012年12月から、電源設備や太陽光発電設備、環境計測器など多種多様な産業設備の遠隔監視・保守支援を行う「FAデータストレージサービス」を開始した(図表1)。データ収集・活用にはFENICSⅡ M2Mサービスを採用することで、短期間・低コストに監視対象物が拡大できることを売りにする。また、監視アプリの開発工数を削減するためのテンプレート提供も行う。
図表1 富士通、ニシム電子の協業によるFAデータストレージサービス |
KDDIの山口氏も、パートナーとの連携を強調する。同氏は決済端末に着目しており、「特定の地域に根ざしたローカルな決済事業者と組んで、M2Mの活用を広げたい」考えだ。
全国的規模の決済事業者はすでに通信機能付の決済端末を利用しているが、「地方に目を向ければ未開拓の市場が広がっている」。
同社の事例では、図表2に示したエコモットの現場監視システム「ミルモット」など、中堅中小企業のM2Mサービスも少なくない。業種・業界に特有の業務ノウハウや、端末・アプリ開発など、キャリアやICTベンダーが不得手な領域を、パートナーの力で補うことが、M2M市場の成長には不可欠だ。
図表2 エコモットが提供する「現場ロイド」サービスの概要 |