――通信キャリア向けビジネスに特化するアムドックスは一般にはまだ知られていません。
モードック 課金や顧客管理システム(CRM)などのBSS(Business Support Systems)と通信事業者のネットワークの効率的な運用の手助けするOSS(Operation Support Systems)分野の製品を主力として展開している会社です。
設立は1982年で、当初は電話帳関連のソフトウェアを手掛けていました。その後、課金システムなどに事業を拡大、さらにM&Aを通じてポートフォリオを拡大し、BSS/OSSの全領域をカバーするようになりました。現在では、課金・CRM、OSSの分野で市場をリードする存在になっています。2012年の売上は32億ドル。世界60カ国にオフィスを構え、約2万名の従業員が働いています。
――日本はどのような位置付けになるのですか。
モードック かつてアムドックスは北米や欧州、中東を中心にビジネスを展開しており、アジアにおいてはあまり戦略的な取り組みを行っていませんでした。
そこで4年前、2009年にアジア・パシフィックディビジョンを設立、特に(1)オーストラリア、ニュージーランド、(2)インドネシア、マレーシア、フィリピンなどの東南アジア、(3)インドの3つの市場を中心にビジネスを本格的に展開して、数多くのプロジェクトを成功させてきました。そして今、次の成長市場として日本に打って出ようとしているのです。
日本はモバイルだけで1億以上の加入者があり、ARPUも約60ドルと世界最高レベルにある非常に大きな市場です。キャリア間の競争が激しく、技術レベルも非常に高い。我々にとって大変魅力的なマーケットだと考えています。アジア・パシフィックディビジョンというより、アムドックス全体の次の成長エンジンになると期待しているのです。
「1日目から2~4割コストが削減できる」
――ここにきて日本でのビジネスに力を入れている理由は何ですか。
モードック 日本のマーケットが今大きな変化の局面に差し掛かっており、我々に大きなビジネスチャンスがあると考えているのです。
例えば日本では、競争の激化に伴い通信キャリアのコスト低減のニーズが強くなってきています。そのため古いシステムをもっと安く運用できるシステムに更新しよういう動きが出てきています。また競争により加入者のチャーン(事業者間移行)が増えており、顧客満足やロイヤリティの重要性も高まってきています。こうしたニーズに、私どものソリューションが貢献できると思います。
もう1つ、重要な変化として挙げられるのがデータ通信トラフィックの急激な増大です。私どものソリューションを使えば、通信キャリアのデータ通信設備を有効活用し、これに対処することができます。
データトラフィックの増加が収益に結びつかないことが世界の通信キャリアの大きな課題になっていますが、この分野でも我々のソリューションをお役立ていただけると考えています。
――日本の通信キャリアは、海外の製品の導入には慎重だったと思います。アムドックスにとって難しい市場なのではありませんか。
モードック 確かに、以前はそうした傾向があったと思います。しかし日本の通信キャリアの考え方は大きく変わってきています。現在では、日本市場で求められる技術水準に合ってさえいれば、受け入れられる状況になっていると思います。
また、日本の通信キャリアも国内だけでなく、世界を視野にビジネスを進められるようになってきています。我々の製品をご利用いただくことで、日本の通信キャリアが海外のビジネスで成功するためのお手伝いもできるのではないかと考えています。
――通信キャリアのコスト低減のニーズが高まっているといわれましたが、アムドックスの製品の導入でどの程度の効果が得られますか。
モードック 日本の通信キャリアが使われているシステムには古いものが多く、キャリアがそれぞれ独自のシステムを開発されているので、初期費用だけでなくシステム変更などの運用コストもかさみます。
もちろん設備の更新にはかなり大きなコストが必要になりますが、パッケージ化された当社の製品を使えば、導入コストは既存システムの1年の運用コストで相殺できてしまいます。いくつかの事例ではお客様に、システムを変更した1日目から2~4割コストが削減できるとコミットしています。