映像・放送機器の展示会「Inter BEE」が2025年11月、幕張メッセで開催された。ここで毎年、大規模なリモートプロダクション環境を構築してMoIP(Media over IP)の最新動向を紹介する企画展示「IP PAVILION」が行われている。
今年は40数社が参加。企画・運営の一人であるファーウェイ・ジャパンの池田俊樹氏は「今回はよりクラウドに舵を切った展示を行いました」と振り返る。

(左から)ソニーマーケティング B2Bビジネス本部 統合戦略部門 B2Bビジネス1部 ライブソリューション推進課 ライブソリューションプランナーの高木大輔氏、ファーウェイ・ジャパン 法人ビジネス事業本部 パートナー インダストリーディベロップメント事業部 アカウントセールスマネージャーの池田俊樹氏
会場には制作基盤の異なる2つのキー局をイメージした仮想テレビ局を設置した。そのうちの1つ「テレビ幕張系列」はスカパーJSATのスカパー東京メディアセンター(東陽町)をプライベートクラウド基盤とし、ビデオスイッチャーやマルチビューアーなどプロセッサーに当たる機材を同センターに集約。幕張メッセ側には操作パネルのみを置き、ネットワーク越しに遠隔操作する構成だ。
もう1つの「メッセテレビ系列」はAWS基盤上に放送制作アプリケーション群を配置したクラウド型の制作環境である。両局は在阪民放3局のスタジオや東京・渋谷のサテライトステージと接続し、クラウド/オンプレミスを意識させない操作性でライブ制作を行った。少ない機材で成立するワークフローが、MoIP技術の進展を印象づけたが、実はこの環境構築において最大の課題となったのは回線だったと池田氏は明かす。「放送品質を確保するにはパケットロスがゼロの回線が必要とされていますが、非圧縮のHD/4K映像を送れる専用線は非常に高価です。地方では専用線や10Gbps回線の調達自体ができないことも珍しくありません。1Gbpsの帯域保証型回線を使う方法もありますが、その場合は圧縮による遅延の考慮や対応機材の準備が必要になります」
また、クラウド上に構築した放送制作アプリケーションはマルチキャスト通信を前提としないため、ユニキャスト化やSRT(Secure Reliable Transport。低遅延でロスに強いIP伝送方式)への変換が必須となる。












