ハイブリッドワークやビデオ会議が常態化し、1人の従業員が複数のデバイスを同時に接続することも当たり前となった。これまでの企業のWi-Fi環境ではこうした変化に対応できず、通信の遅延や不安定さが業務の生産性に悪影響を及ぼしてしまう。
そこで解決策として期待されているのがWi-Fi 7だが、世界的には普及が進む一方で、日本ではまだ本格的な導入に至っていない。ファーウェイ・ジャパンの陶堯氏は、「Wi-Fi 7対応端末の普及が追いついていないのは事実です。ただ、当社のWi-Fi 7対応アクセスポイント(AP)は旧世代端末でも速く通信できる設計になっており、導入の意味は十分あります」と話す。
華為技術日本株式会社 ICTマーケティング&ソリューション・セールス部
ネットワークソリューション・セールス部 部長 陶堯氏
自社製チップで高性能実現 セキュリティにも独自技術
ファーウェイでは、Wi-Fi 7対応AP「AirEngine」シリーズの開発にあたり、自社製チップとアンテナの設計を刷新。これにより、「Wi-Fi 5や6の端末でも、スループットが向上しました」。
また、MU-MIMO、OFDMA、Wi-Fi 7で追加されたMRU(マルチリソースユニット)といった並列通信技術を同時に稼働可能にする独自の「コンバージドスケジューリング」を実装。他社製品が各機能の切替利用にとどまる一方、ファーウェイは1台のAPでの同時処理を実現し、多端末環境での通信効率を高めている。
もちろん、Wi-Fi 7の中核機能の性能も高い。複数の周波数帯を同時に束ねて通信できるマルチリンクオペレーション(MLO)では、2つの周波数を組み合わせたMLO構成で、他社製品の2.8Gbpsを上回る最大3.5Gbpsのスループットを実現しており、実運用での高性能を裏付けている(図表1)。
図表1 Huawei Wi-Fi 7の長所
さらに、同社が独自開発した「ダイナミックスマートアンテナ」は、ユーザーの位置や密度に応じて電波の放射パターンを最適化。人が一方向に集中していればその方向に、分散していれば全方位にカバーすることで、干渉を抑えつつ通信効率を最大化する。「MLOと合わせ、従来比で伝送効率が25%向上しました」
高密度通信を支えるもう1つの要素が、Wi-Fi 7で実装された4096QAM(4K-QAM)の実用性向上である。通常は伝送距離が1m程度に制限されるが、同社は独自のDPD(Digital Pre-Distortion)技術により、最大5mの高精度伝送を実現している。
セキュリティも独自技術で強化した。未認証のユーザーによる無線通信の盗聴を防ぐ「Wi-Fiシールド」機能だ。周囲にはあえてノイズを重畳して送信し、認証済みユーザーにはノイズを打ち消す信号を送信して、通常通り通信させる仕組み。これにより、盗聴やパケットキャプチャを試みても内容の判読は不可能になる。金融など高セキュリティが要求される企業に活用されており、日本でも医療機関での導入実績がある。
ユニークなのが、ユーザー単位のQoSへの対応だ。通常のQoSはアプリケーション単位だが、ファーウェイは「VIPユーザー専用保証」により、アカウントベースで通信品質を優先することが可能。混雑時でも遅延を通常の4分の1(<50ms)に抑えることができ、実際に中国の大手企業では役員向け通信で高い評価を得ているという。