スマートデバイスとクラウドという企業ITを変革する両輪のうち、後者を牽引しているヴイエムウェア。その同社が、これらの普及で激変するエンドユーザーコンピューティング環境においても、リーディングカンパニーの座を狙っている。
ヴイエムウェアは2012年5月7日、スマートデバイスとクラウドの普及がもたらす“ポストPC時代”に向けたエンドユーザーコンピューティングソリューションに関する記者説明会を開催した。
OSに束縛されない世界を実現
今回の会見ではいくつかの製品が発表されたが、その中核を担うのは「VMware Horizon Application Manager 1.5」である。同社代表取締役社長の三木泰雄氏を言葉を借りれば、その役割は「n対nをコネクトしてマネージメントすること」。まずは、このHorizon Application Managerについてから説明していこう。
「今は1人の個人がWindows PC以外にスマートフォンやiPadなど複数の端末を持っている。アプリケーションにしてもWindowsのアプリケーションもあれば、SaaSやモバイルアプリケーションもある」
三木氏の言う「n対n」とは、このように多様なデバイスが多様な形態のアプリケーションにアクセスする状況を指している。Windows PCとレガシーアプリケーションという従来の1対1の関係と比較すれば、スマートデバイスとクラウドの普及によってデバイスとアプリケーションの関係性は格段に複雑化した。「IT部門にとっては非常に負荷が増えている。しかも『セキュリティをおろそかにしていい』とは誰も言わない」(三木氏)。そして、この関係性を整理・コントロールするのがHorizon Application Managerだ。
これがヴイエムウェアの言う「n対n」の関係 |
Horizon Application Managerを利用するとIT部門は、多様なデバイスとアプリケーションが存在するなか、どのアプリケーションをどのユーザーやどのデバイスに許可するかなどを、Active Directoryと連携してポリシーベースで一括管理できるようになるという。現在、Horizon Application Managerで管理できるのはSaaSなどのWebアプリケーションと、同社のアプリケーション仮想化ソリューション「VMware ThinApp」により仮想化されたアプリケーションの2タイプ。今後、モバイルアプリケーションなどもサポートする計画だという。
多様なアプリケーションとデバイスの関係の一括管理を可能にするHorizon |
また、ユーザーにとっても利便性は高まる。まずユーザー毎にポータルを用意。自分が利用可能なアプリケーションがカタログ表示され、スマートデバイスやPCなど様々なデバイスから利用できる。「どのデバイスからアクセスしても同じような画面が出て、自分のアプリ、自分のドキュメントを利用できる。ヴイエムウェアは、OSに束縛されない世界を実現していく」(シニアEUCスペシャリスト 飯島徹氏)。さらに、Horizonにアクセスするだけで、すべてのアプリケーションへのシングルサインオン(SSO)が実現される。
なお、Horizon Application Managerは以前から提供されているが、ThinAppアプリケーションへの対応、提供形態としてサービス型だけでなくオンプレミスも加わった点などがバージョン1.5の主な特徴となる。市場予想価格はユーザー当たり7500円。
企業版Dropboxの「Octopus」
このほか会見では、デスクトップ仮想化ソリューションの「VMware View 5.1」、企業向けのファイル共有ソリューション「VMware Project Octopus」のベータ版も紹介された。
VMware View 5.1は、対応クライアントとして新たにMacやKindle Fireも追加。さらに、ストレージアクセスの最適化によるパフォーマンス向上とコスト削減などの機能強化が図られた。市場予想価格は同時接続ユーザー当たり1万6000円。
また、Octopusは企業版のDropboxとも言うべきもので、セキュアにファイル共有が行えるのが特徴。2012年第2四半期にベータ版が提供される予定だ。