SAPジャパンが2012年4月18日、記者会見を開催。ワールドワイドでモバイルビジネスを統括する独本社のエグゼクティブバイスプレジデント、クリス・マクレーン氏が来日し、同社のモバイル戦略を説明した。
今回の会見は、4月10日にドイツ本社から発表された2つのニュース――Syclo社の買収と、アドビ、Appcelerator、Senchaとの協業を受けたものだ。
マクレーン氏はまず、SAPのモバイルポートフォリオについて紹介。「従業員向け(B2E)から消費者向け(B2C)までカバーし、提供形態もクラウドからオンプレミスまで幅広い。業界で最も包括的なプラットフォームだ」とした。
SAPのモバイルポートフォリオ |
そのうえで、B2Eの領域において特に重要なのが「資産管理とフィールドサービスだ」と説明。そこで、資産管理とフィールドサービス分野のモバイルアプリベンダーであるSyclo社を買収したという。マクレーン氏によれば、Syclo社は39カ国600社以上の顧客を持ち、ガートナーからは同分野におけるリーダーとして評価されているそうだ。「特に、公益や石油、ガス、製薬、宇宙開発などの業界の深い知識を有している」
買収したSyclo社の概要 |
もう1つのニュースは、モバイルアプリの開発プラットフォームプロバイダーとの提携である。アドビの「PhoneGap」、Appceleratorの「Titanium Development Platform」、Senchaの「Touch」の3つの開発環境から、SAPのERPと連携したモバイルアプリが開発できるようになる。つまり、SAPに関する知識がなくても、使い慣れた開発環境でバックエンドでSAPにアクセスするアプリが容易に作れるのだ。
その狙いは、従来のエンタープライズ向けITエンジニアだけではなく、Webデザイナーやクリエイターなどユーザビリティに優れたアプリを作れる開発者たちを、SAPのエコシステムに取り込んでいくこと。
「モバイルの本質はコンシューマライゼーション。コンシューマ向け、エンタープライズ向けという垣根は、利用者にとっても開発者にとっても数年でなくなっていく。この垣根をなくすために本格的に取り組んでいくというのが、SAPの戦略的方向性だ。何向けであろうが、ユーザビリティが重要になる」とSAPジャパン リアルタイムコンピューティング推進本部 本部長 兼 Co-Innovation Lab Tokyo担当の馬場渉氏は語った。
なお、モバイルアプリの開発環境は他にも多数あるが、「今回はトップ5の中の3つと提携した。今後さらに提携先を広げていく考え」(馬場氏)とのことだ。
会見では、iPadなど向けのモバイルアプリのデモも多く披露された。その1つがSenchaの開発ツールを利用したモバイルアプリ。3Dで店内の様子を見られ、商品を選ぶとそのコストや売上状況などが表示される。
Senchaの開発ツールで作られたiPadアプリ |
また、ウィキペティアやニュースサイト、SAPのERP等と連携して顧客との面談時に必要な情報を一元的に閲覧できるモバイルアプリや、患者の診断に必要な情報を集約する医師向けモバイルアプリなども紹介。「知りたい情報がすべて自分の手元で把握できる」とマクレーン氏は話した。