テレビ会議やWeb会議などビジュアルコミュニケーションシステムの導入が企業の間で進んでいるが、シスコシステムズの公家尊裕氏によれば、今はまだ“フェーズ1”に過ぎないという。「テレビ会議という呼び方が定着している通り、これまで日本ではビジュアルコミュニケーションというと“会議”をIT化しただけ。しかし今、新しい潮流が来ている」
ビジュアルコミュニケーションにおける新しい潮流とは何か――。シスコは2011年11月17日、新しいコラボレーションやワークスペースの在り方に関する記者説明会を開催した。
「音声通話とまったく同じ流れがビデオにも起きている」
ビジュアルコミュニケーションが広く普及してきた背景には、2つの面での進歩があると公家氏は説明する。1つは“質”の進化だ。例えば、相手があたかも目前にいるかのような臨場感を提供する「テレプレゼンス」がシスコから登場したのは2006年。現在では非常に高いクオリティが実現されている。
もう1つは、“量”の進化だ。低価格化が進んだことで、ビジュアルコミュニケーションが導入される場所もどんどん増えてきた。そして、この両面での進化の結果、今起きているのが次の2つの潮流だという。
まずは「コミュニティサイズの拡大」だ。従来、拠点間をつなぐだけだったのが、最近は企業内の様々な部署、あるいはグループ会社やパートナー会社など企業間のコミュニケーションに使われるようになってきている。「我々シスコでも、パートナーとの定例会議はだんだん訪問しないスタイルに変わりつつある」。“点の展開”から“面の展開”への変化だ。
拠点間コミュニケーションから企業間コミュニケーションへと、コミュニティサイズが拡大しているのが新潮流の1つめだ |
また、このような言い方もできるという。「これまでのビジュアルコミュニケーションは、場所と場所をつないでいた。しかし震災以降、日本でも場所に紐付かない働き方の必要性に対する認知が高まっているが、今求められているのは人を中心にしたワークスタイル。どこにいても、どんなデバイスを使っても、ビデオによるリッチなコミュニケーションができるようになっている」
シスコでは、いつでもどこでもビジュアルコミュニケーションが行えるソリューションのことを「パーベイシブビデオ」と呼んでいるが、こうした世界が現実になりつつあるというのがシスコの考えだ。「音声通話において、人をつなぐという考え方を極限まで強化したのが携帯電話。まったく同じ流れがビジュアルコミュニケーションにも起きている」
「パーベイシブビデオは未来の話ではない」と公家氏。例えば大手金融機関のHSBCでは、3年以内に全社員にビデオ環境を提供する計画だという |
公家氏が挙げたもう1つの新しい潮流は、リアルタイムで出席できなかった会議や社内セミナーなど、録画されたビデオの活用だ。シスコが実施した調査によると、現在でも企業の役員の76%が業務に関連するビデオを週に一度は観ているとのこと。また、社員が作成したビデオに対してコメント/推薦・転送する役員は93%にも上るという。
グローバルで見ると、企業の役員は現在すでに録画されたビデオを大いに活用しているという |