きのこ栽培・販売最大手のホクトは、地元・長野県を中心に全国19カ所・29工場でエリンギ、マイタケ、ブナシメジ、ブナピー(白いブナシメジ)を栽培、全国約3万店舗のスーパーや小売店に展開している。このうちブナシメジ、エリンギは販売シェアで全国1位を誇る。
同社は今年7月、自社製品を販売している1941店舗で、NTTドコモの「MobilePOPサービス」の導入を開始した。
店舗に設置されたデジタルサイネージ。携帯電話をかざすと、放映中のレシピを取得することができる |
これは店頭の商品棚に7インチの専用端末(キャセイ・トライテック製)を設置し、来店客向けに映像と音によるプロモーションを行う小型デジタルサイネージ。MobilePOPサービスは初期費用が無料、月額料金が1契約あたり980円で利用できる(端末費用およびFOMA利用料が別途必要)。遠隔からFOMA回線を使って電子POPの配信・管理を行い、開始時間や終了時間などの放映スケジュールの設定も可能だ。ホクトでは自社のCMやきのこを使った調理レシピの動画のほか、店舗の特売情報やキャンペーン情報を配信している。
図表1 MobilePOPのサービスイメージ |
ニーズに合ったレシピを紹介
同社は消費者にきのこをアピールする目的からプロモーションに積極的で、2004年以降、3000店舗の売場に大型テレビを設置、DVDを使ってきのこ料理の紹介に取り組んできた。紙のレシピシートが一般的な中で、音や映像を使ったレシピ紹介は来店客の関心を引く効果が高い。その一方で、電源を入れ忘れたり故障した状態のまま放置されたり、棚替えの際に撤去されてしまうなどの問題があった。また、常に来店客にタイムリーな情報を届けるため毎月1回のペースでコンテンツを更新していたが、その都度、店舗責任者やホクトの営業担当者が入れ替え作業を行わなければならず、手間がかかっていた。
ホクトは全国8ブロックに約80人の営業担当者がおり、例えば九州地方は沖縄も含めて6人で担当している。各店舗のDVDを入れ替えたり、稼働状況を確認するためには1店舗ずつ回る必要があり、限られた人数の中で大きな負担となっていた。
ホクトがプロモーションに力を入れている背景には、「販売量の平準化」という目的もある。
きのこは鍋料理や炒め物に用いられることが多く、秋から冬にかけて売上が急増する一方、春から夏の間は減少する。日本は南北に長く、同じ時期でも地域によって気温や湿度に差があるため、料理のニーズも異なる。
気温やニーズのバラつきに関係なく、蒸し暑い季節や地域でもきのこを料理に活用してもらおうと、料理研究家や社員が知恵を絞って調理方法を考案し、店頭だけでなく自社サイトやBSの料理番組などでも紹介している。しかし、DVDを使った情報配信は1カ所から全国に送る一極集中型のため、一般的なレシピにならざるを得ない。「エリアごとの細かなニーズを拾い上げ、レシピを通じて店頭でもお客様のニーズに応える方法はないか、1年ほど前から検討を開始した」と、きのこ販売本部販売企画室室長の神戸勝氏は話す。
きのこ販売本部 販売企画室 室長 神戸勝氏 | きのこ販売本部 販売企画室 岩崎梓帆氏 |