<特集>オール光ネットワーク最新動向NTT川添副社長が語るIOWN APNの現在地「光電融合デバイスで世界No.1目指す」

「APN IOWN1.0」の商用サービス開始から1年あまりが経過したが、現在の導入状況やニーズ動向、ユースケースはどうなっているのか。NTTの川添副社長は、「放送局や不動産、エンタメ等ですでに活用実績がある」と話す。Rapidusとの連携や、メンブレンフォトニクスなどのNTT独自技術の開発を進め、「光電融合デバイスの世界トップシェアを目指す」と川添副社長は意気込む。

NTT 代表取締役副社長 副社長執行役員 川添雄彦氏

NTT 代表取締役副社長 副社長執行役員 川添雄彦氏

――「APN IOWN1.0」の商用サービスを開始されて、約1年半が経ちましたが、この期間を振り返ってみていかがですか。

川添 昨年3月のサービス開始以来、様々な分野の企業の皆さまからお問い合わせやご期待の声を頂戴しており、手応えを感じています。

放送局や不動産、エンタメ等の分野においては、すでにオール・フォトニクス・ネットワーク(APN)をお客様にご活用いただいた実績があります。こういった業界に加え、データセンター(DC)や教育、金融などの業界へもアプローチしており、現在数十社ほどのお客様と話を進めています。

――IOWNに対する顧客のニーズや期待をどう捉えていますか。

川添 1つは低遅延です。昨年11月には、東京にある遠隔操作システムから、約500km離れた大阪に設置されたタワークレーンを操縦する検証を実施しました。東京-大阪間をAPNでつなぐことで、遅延値2ミリ秒(ms)という超低遅延を実現しました。これは人間が遅延時間を感じないレベルの数値です。

遠隔医療の実証では、ドクターから「ジッター(ゆらぎ)がない」という声もいただいています。ジッターがなければ、高精細映像を圧縮せずに伝送できます。また、遅延をコントロールできる点も大きなポイントです。ジッターが生じることを前提に、アプリケーション側でバッファーを設定するケースも多いですが、遅延時間を確定させることによってこれが不要になります。

――DC間接続やエンタメ、遠隔医療などのユースケースについては、具体的にどのような取り組みが進んでいるのですか。

川添 PoCまで含めた実装検証を複数件完了させています。

DC間接続は、NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)が今年3月に提供開始した「APN専用線プラン powered by IOWN」により、国内70拠点以上のNTT ComのDC間をAPNで接続できるサービスを展開しています。また、英ロンドンや米アッシュバーンなど、海外でもDC間接続に関するPoCを実施しています。

エンタメに関しては昨年12月、松竹と合同でAPNと古典を融合した「超歌舞伎」を開演しました。バーチャルアイドルの初音ミクと歌舞伎役者の中村獅童さんが共演しているのですが、これまでの超歌舞伎においては、初音ミクの映像は完パケ(すでに出来上がったVTR)を使用し、その映像にあわせて歌舞伎役者が芝居をしていました。

今回はその逆で、中村獅童さんの芝居にあわせて初音ミクを動かすことが可能になりました。遠隔で人が初音ミクを操作しているのですが、APNは遅延がないので、その人の動きがリアルタイムに初音ミクへ反映されるという仕組みです。

遠隔医療は、今年3月からオリンパスとともにクラウド内視鏡システムの実証実験を開始しました。内視鏡とGPUサーバーをAPNで接続することで、内視鏡装置内で処理されてきた映像処理をクラウドで実施する「内視鏡のクラウド化」を実現させたいと考えています。これをビジネス化するだけでなく、医療機器向けネットワークのリファレンスモデル確立を目指しています。

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川添雄彦(かわぞえ・かつひこ)氏

1961年9月生まれ。1987年3月、早稲田大学大学院理工学研究科博士課程前期課程修了後、同年4月にNTT入社。2009年9月、京都大学大学院情報学研究科博士課程後期課程修了、博士(情報学)。2014年7月にNTT サービスイノベーション総合研究所 サービスエボリューション研究所長、2016年7月にサービスイノベーション総合研究所長、2018年6月に取締役研究企画部門長、2020年6月に常務執行役員 研究企画部門長を経て、2022年6月、代表取締役副社長 副社長執行役員に就任

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