シスコシステムズは2011年10月18日、60Wの電源供給が可能な次世代PoE「UPOE」(Universal Power Over Ethernet)を発表した。現在広く普及するPoE Plusの30Wと比べて1ポート当たり2倍の電力を供給できることから、イーサネットケーブルで電源供給可能な機器の幅が大きく広がることになる。「Universalという言葉には“万能”という意味が込められている。UPOEにより、オフィスの中のAC電源ケーブルをなくしていく」とシスコシステムズ 専務執行役員の木下剛氏は語った。
シスコシステムズ 専務執行役員 木下剛氏 |
今回発表されたUPOEの機能は、同社のエンタープライズ向けスイッチ「Cisco Catalyst 4500Eシリーズ」にまず搭載される。すでに販売中のUPOE対応モジュールを実装することで、1ポート当たり最大60Wの電力を対応機器に供給することが可能だ。イーサネットケーブルは標準的なCat5eを利用。PoE Plusでは8芯のうち4芯を電源供給に使うが、UPOEでは8芯すべてを用いることで60Wを実現している。
UPOEの概要 |
UPOEは現時点ではシスコの独自規格であるが、下位互換性も確保されており、PoE(IEEE802.3af)やPoE Plus(IEEE802.3at)対応機器にも給電できる。また、シスコでは今後UPOEの標準化も進めていく考えで、「おそらくこれから2年くらいかけて標準化されていくのでは」との見通しを木下氏は示した。なお、PoEやPoE Plusについても、シスコがまず技術開発を行い、その後約2年後にIEEEで標準化されるというプロセスを経てきたという。
シスコはこれまでからPoE技術をリードしてきたとアピール |
UPOEの一番の意義といえるのは、30Wから60Wと電源供給能力が倍増したことで、「大半のオフィス機器に供給できるようになった」ことだ。従来、PoEで給電する機器というとIP電話機や無線LANアクセスポイント、小型スイッチ、ネットワークカメラなどが代表的だった。しかし、会見では、シスコ製のゼロクライアント端末「Cisco VXC」や卓上型のテレプレゼンス端末「Cisco TelePresence System EX60」などにイーサネットケーブルで給電するデモが行われた。
UPOEの適用例。例えば、デスクトップ環境の電源をイーサネットケーブル1本にまとめることができる |
また、デモではシスコ製以外のUPOE対応機器への給電も披露された。1つはサムスン電子製のディスプレイ型ゼロクライアント端末「SyncMaster NC220」である。もう1つはDEP/シャルレライテックのLED照明。最近、節電のためLED照明の導入がオフィスでも進んでいるが、これはイーサネットで給電できるLED照明である。
LED照明へのPoE給電も |
今はまだUPOE対応機器は限られるが、標準化作業の進展に合わせて対応機器が今後広がってくることは間違いない。そうなれば、デスクトップ環境から照明まで、木下氏の言う通り、オフィス内のほとんどの機器をイーサネットケーブルで給電する時代がやってくるかもしれない。