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5Gの能力をIoT向けに削ぎ落したRedCap
日本でも整備が本格化してきた5GSA(スタンドアローン)ネットワーク。この5G SAの利用シーンを、大きく拡大する可能性を持つ新たな5G規格(5G NR)の商用化が近付いてきている。2022年6月に3GPPリリース17で、IoT向けの仕様として策定された「RedCap」だ。RedCapは5G SAのみで動作する。
「Reduced Capability(能力削減)」の略であるRedCapは、5Gの能力を文字通り削ぎ落とした規格で、端末の小型化、省電力化、低廉化を実現する。SAのみにしか対応しないのは、NSAのための機能も省かれているためだ。
エリクソン・ジャパン CTOの鹿島毅氏は、RedCapを「スマートウォッチなどのウェアラブル端末、産業用センサーなど、低・中速度のスループットで十分運用できるユースケースを狙って規格化された」と説明する。
これらのユースケースでは、フルスペックの5Gによる数百Mbpsといった高速通信は必要ない。逆に、電池による長時間稼働、端末の小型・低価格化など、現行の5Gでは実現しにくい要件が求められる。そこで規格化されたのがRedCapだ。
「通信事業者のビジネスにおけるIoTの比率は高まっている。中でも大きく伸びているのが、ある程度のデータ容量が必要な監視カメラやウェアラブルデバイスなどだ。現在こうした用途には4G(LTE)が使われているが、いずれ5Gに置き換わるため、その受け皿が必要になる」(鹿島氏)
大量のIoT端末が4Gに残った状態では、4Gから5Gへの移行に支障が生じてしまう。RedCapを受け皿に、5Gへの移行をスムーズに進めることが、RedCapを規格化した目的の1つだ。
さらには、RedCapならではの特徴によって、新たなIoT需要を創出することも重要な狙いとなっている。