テレビ会議で脱“金太郎飴”組織――中古車大手ガリバーの企業文化改革

従来の「中央集権型」に、社員1人ひとりが考える「自律分散型」の企業文化をプラス――。ビジネスモデルを第二フェーズへと移行させるため、ガリバーはテレビ会議を活用した。

成長企業が備えているのは、市場ニーズに応えるビジネスモデルだけではない。そのビジネスモデルを十分に機能させる企業文化も存在している――。中古車事業大手のガリバーインターナショナルの軌跡はそう物語る。

1994年に創業したガリバーは、2000年に東証二部、2003年に東証一部に上場。現在の連結売上高は1420億3800万円(2011年2月期)と猛スピードで成長の階段を駆け上がってきた。その主要因となっているのは買取を主体とするビジネスモデルを構築したこと、そしてそのビジネスモデルと表裏一体をなす企業文化を作り上げたことだ。

社内コミュニケーションを担当するビジョン推進室Gナビセクションリーダーの木岡竜一氏は次のように語る。「当社の急成長を支えたのはトップダウンによる中央集権的な企業文化だ。トップが『こっちへ行きなさい』というと全員がそっちへ行く“金太郎飴”のような組織になっている。全国のボランタリーチェーンが掲げている看板が同じものであるように、各店舗で働く社員も同じでいい。そういう戦略で事業を進めてきた」

そのガリバーは今、さらなる成長を目指し、新たなビジネスモデルを加えた第二フェーズに入っている。第二フェーズの推進を担うのは現場の力――店長を核とする個店の企画力や提案力だ。それは「1人ひとりが考え、行動する組織」を作ることであり、トップダウンで動いてきた中央集権的な組織に、自律分散型の文化を加味していくことにほかならない。

そして、この現場力強化のための手段の1つとして活用しているのがテレビ会議システムである。

ガリバーのビジネスモデルとは?

まず、ガリバーのビジネスモデルを俯瞰しておくことにしよう(図表1)。

図表1 ガリバーインターナショナルの事業戦略と企業文化・コミュニケーションの位置づけ
図表1 ガリバーインターナショナルの事業戦略と企業文化・コミュニケーションの位置づけ

創業来の第一フェーズにおいて同社を牽引したのは、創業者の羽鳥兼市・現会長が考案したビジネスモデルだ。創業に際し自動車の流通に革命を起こそうと考えた羽鳥会長は、買取事業にフォーカスすることを決めた。

自動車の買取という行為そのものは目新しくない。従来から「下取り」という形で行われてきた。ガリバーが革新的だったのは、全国一律の中古車査定システムを生み出したことである。査定情報や市場情報をもたない消費者にとっては提示された価格が果たして適正なのかの判断が難しく、それまではすっきりしないまま取引していた。そこにガリバーは明快な物差しを持ち込んだ。

ガリバーの査定担当者は、全国一律に定められた基準に基づいて自動車の走行距離や状態などを評価し、本部に送る。本部はその評価点をもとに査定を行い、全国に130カ所ほどある業者向けのオークション会場のうち、最も高い価格を基準値にして買い取る。評価基準と買取価格の根拠が明快で、消費者は安心して取引できることから、ガリバーの買取事業は急成長したのである。

さらにもう1つガリバーがユニークだったのは、買い取った中古車の小売をしなかったことだ。業者オークションに出品・販売するBtoBの卸売事業に特化し、BtoCの小売は行わなかった。

しかし最近、ガリバーはこの戦略を転換した。小売事業をもう1つの柱に育てていくことを決めたのである。これが同社の第二フェーズである。これまで同社の武器となったのは全国一律の査定システムだったが、小売事業では地域の特性に合致したキャンペーン展開や顧客ごとに異なるニーズをキャッチした提案など、個々の店舗の創意工夫が重要になってくる。

ビジネスモデルの移行に伴い、トップの指示通りに全員が同じように動く中央集権型の企業文化の変更も必要になったのである。

月刊テレコミュニケーション2011年8月号から再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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