ソフトバンクと東芝デジタルソリューションズ(東芝DS)は2024年3月19日、東芝DSの量子鍵配送(Quantum Key Distribution:QKD)システムを、ソフトバンクの光無線通信の試験環境に導入し、光ファイバーと光無線を組み合わせたQKDの動作実証に成功したと発表した。
QKDは、量子力学に基づく原理を通信に応用することで、データの送信側と受信側の双方に共通の暗号鍵(共通鍵)をそれぞれ生成し、共通鍵を生成するための情報を光子(光の粒子)に乗せて伝送するものだ。
光ファイバーと光無線を組み合わせたQKDネットワークのイメージ
従来のQKDは、都市部の拠点間の接続に光ファイバーを用いる必要があった。そのため、ビル間や公道をまたいだ建屋間など、光ファイバーの敷設が困難な拠点や敷設に多くの時間を要する拠点では、QKDの導入が阻害されてしまう場合がある。ソフトバンクと東芝DSはこの課題を解決するため、従来のQKDの構成に光無線も加えて活用する実証実験を行った。
この動作実証において、光子の伝送路の途中に光無線を組み合わせた場合でも、光ファイバー向けのQKDシステムを変更することなく安定した鍵生成が可能であることを確認。
また、性能評価においても、暗号鍵の生成が可能な伝送路全体の光の減衰量について把握することができたという。今後さらに特性の把握を深めることで、光無線を組み合わせたQKDシステムの運用に必要となる無線機の要件定義や無線区間の回線設計が可能になるとしている。
実験システムの構成イメージ
将来的には、ビルの屋上などに光無線機を設置して活用することで、光ファイバーを新設することなく短期間でQKDを利用することが可能になるという。