後編では、各社のクラウド型仮想デスクトップサービスの特長を紹介しながら、導入するときに考慮したいポイントについて説明しよう(前編はこちら)。
シンクライアント方式の選択
仮想デスクトップを実現する方法には、前編で述べたように複数の方法(シンクライアント方式)があるが、サービス事業者によってどのシンクライアント方式を採用しているかは異なっている。また、1つのシンクライアント方式だけを提供しているサービスもあれば、複数のシンクライアント方式の中から選択できるサービスもある。従って、どのシンクライアント方式が自社ニーズにマッチしているかを見極めておく必要がある。
例えば、インターネットイニシアティブ(IIJ)の「IIJ GIO仮想デスクトップサービス」ではサーバーベースコンピューティング(SBC)方式と仮想PC方式に対応した3つのサービス体系の中からニーズに合わせて選択できる。具体的には、マイクロソフトのリモートデスクトップサービス、シトリックス・システムズ・ジャパンのXenDesktop、XenAppの3つだ(図表4)。
SBC方式 | Microsoftリモートデスクトップサービス (RemotoDesktopパック) サーバー上にインストールされたWindowsベースのアプリケーションを利用し、安価で完全なWindowsデスクトップ環境への変わらないアクセスを提供。 |
サーバーOSで稼働 対応OS |
Citrix XenApp 「Microsoft リモートデスクトップサービス」より規模の大きな利用に適し、よりセキュアで、よりユーザービリティの高い環境を提供。また、多くのOS(Windows、MacOS、Linux、iPhone/iPad 等)の対応クライアントを提供。 |
サーバーOSで稼働 対応OS/製品 |
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仮想PC方式 |
Citrix XenDesktop Windowsクライアント環境を、高いユーザビリティのままクラウドにて実現。 Windowsデスクトップをサービスとして、あらゆる場所の、あらゆるユーザーに、セキュアに提供。Citrix XenAppと同様に、対応クライアントとして多くのOSに対応。 |
クライアントOSで稼働 対応OS |
また、NTTコミュニケーションズの「Bizデスクトップ」では図表5のようなサービスラインナップを提供している。標準型はMicrosoft リモートデスクトップサービスを利用したSBC方式、カスタマイズ型はCitrix XenAppをベースにしたSBC方式あるいはCitrix XenDesktopによる仮想PC方式、グローバル型はCitrix XenDesktopを利用した仮想PC方式だ。
図表5 Bizデスクトップ Proのラインナップ
(出典:NTTコミュニケーションズ資料を基に編集部作成)
SBC方式 | 標準型 (Microsoft リモートデスクトップサービス) ・BizCITYサービス基盤のサーバー上で仮想デスクトップ環境を用意し提供するサービス ・仮想デスクトップへは、VPNによるアクセス ・サーバーリソース(CPU/メモリ/ストレージ)は利用状況に応じ柔軟に拡張可能 |
仮想デスクトップ環境を安価な月額料金で利用したいユーザー |
SBC方式/仮想PC方式 |
カスタマイズ型 ・BizCITYサービス基盤上でユーザーの要望に応じた、仮想デスクトップ環境を構築し提供するサービス ・リモートアクセス、端末パッケージ、専用ヘルプデスクの設置等、柔軟な組み合わせによる提供が可能 |
仮想デスクトップ環境を、自社環境に合わせて構築し、運用面を含めてアウトソーシングしたいユーザー |
仮想PC方式 |
グローバル型 ・海外のデータセンター(香港/シンガポール等)のサーバー上で、仮想デスクトップ環境を構築し提供するサービス ・ 日本語/英語/中国語の3カ国語をサポート |
海外拠点のICT環境の整備にあたり、デスクトップ環境を整備したいユーザー |
これらのラインナップの中からどれを選択すべきか、表の中にも目安となる説明が掲載されているが、例えば、ユーザーの自由度という観点から比較すると、仮想PC方式のほうがSBC方式よりも自由度は高い。ただし、必要とされる運用スキルを比較すると、SBC方式のほうが容易に導入できるので、サービスコストを下げることができる。