IDC Japanは2024年2月28日、2024年以降の世界および国内のAIの取り組みや課題に関する10大予測を発表した。
昨今、ビジネス環境の急速な変化や、最新技術の連続的な市場投入などによるデジタルビジネスの急速な台頭がみられる。そのデジタルビジネスに欠かせない技術の1つであるAIは、深層学習や自然言語処理、画像認識、テキストや画像、音声の生成など、複数の技術領域で継続的な進化を遂げている。そして、開発競争が進む大規模言語モデルを活用した対話型AIが2022年に商用化されたことで、人間のような自然な言語の生成と理解を可能とする、生成AIの認知と利用への期待が急速に高まっている。今後は、テキストに留まらず、画像や音声などマルチモーダルなアルゴリズムの組み合せ利用によって、ユーザーに提供されるエクスペリエンスや、インサイトはさらに高度化することが予測される。
同時に、AIに対する法規制やガイドラインは技術進展か、規制の厳格化かの間で国内外は揺れ動いており、社会全体としてリスクに対して適切に対応することが求められている。このような状況のもと、IDCでは2023年10月、全世界のAIの取り組みや課題に関する10大予測を「IDC FutureScape:Worldwide Artificial Intelligence and Automation 2024 Predictions」で発表した。さらに、世界と比較した国内での動向を2024年1月に発表しており、そこで取り上げられた10項目は、以下の通り。
1.安全な生成AI:2026年までにクラウドとソフトウェアプラットフォームプロバイダーは生成AIのセーフティとガバナンスを彼らのサービスに優先的にバンドルし、生成AIのリスクシナリオを減少させる。
2.AI法規制:2026年までに、地域を横断するAIの法規制は多国籍企業に対して主要なチャレンジをもたらす。そして、機密性の高いユースケースの実装時間と労力は増加する。
3.人と機械の対話が世代交代:国内では2027年までに生成AIデジタルアシスタントは、企業アプリとの対話のUIとなり、さらには顧客エンゲージメントなどのビジネスプロセス運用にも利用される。
4.企業の自動化は結果重視:2025年までに、国内企業は生成AIを一時的に注力した後には、特定のテクノロジーではなく、成果に基づいた自動化戦略を必須とすることに注力し始める。
5.コアITのAI支出の割合:2027年までに、国内企業はコアIT支出の一定以上をAIイニシアティブに割り当て、製品とプロセスのイノベーション率を上昇させる。
6.AIの経済インパクト:2027年までに全体的なAIの経済インパクトは中和される。企業は最初の混乱を乗り越えて、イノベーションと新たなビジネス機会にリソースを再集中させ、経済拡大を推し進めていく。
7.セルフサービスのナレッジディスカバリー:2025年までに、国内企業は生成AIとRAG(Retrieval-Augmented Generation)の組み合せにより、セルフサービスでの産業特化のナレッジディスカバリーを強化することで、意思決定を向上させる。
8.破壊的なビジネスモデル:2024年までに、一定数の国内企業が革新的なビジネスモデルで生成AIの収益化の可能性を倍増させる。
9.Future of AI:2028年までに、一定数の国内企業が、社会に変革的な影響を与え、重大な機会と脅威を生み出すAGI(現時点では確実ではないが)システムを実験することになる。
10. シリコンの異質性:2027年までに、サーバーCPUと比較したサーバーアクセラレーターへの支出バランスが変化する。
労働人口減少などの社会課題に直面する国内では、その解決策としてAIを活用した自動化技術を各所への展開は、生産性向上の核心となることが見込まれる。日本の特有なハイコンテキストなコミュニュケーション文化と商習慣の利点を活かして、生産性向上の目的だけに留まらない、人と機械が生み出すイノベーションから社会に変革を与えられるようなビジネスモデルをいかにして最新技術とを組み合わせて獲得するか、探索を続けることが求められる。「国内企業は、AIに対する法規制やガイドラインの行方と自社の対応について、今後も注視と柔軟な事業施策への転換を図りつつ、労働人口減少などの社会課題に対処するために、AIを代表とする最新の自動化技術を事業活動に展開する必要があり、その活動を通じて自社のブランド力を向上させることができる」と、IDC Japan株式会社 Software & Services リサーチマネージャーである飯坂暢子氏は述べている。