“失うものがない後発ベンダーの強み”――ジュニパーがデータセンターネットワークを革新

ジュニパーネットワークスが次世代データセンター向けの新しいネットワークアーキテクチャ「QFabric」を発表した。従来型の3階層構造のデータセンターネットワークを「1階層」に革新し、コストや複雑性を排除するという。

ジュニパーネットワークスは2011年2月25日、次世代データセンター向けの新アーキテクチャ「QFabric」と、QFabricファミリー初の製品となるスイッチ「QFX3500」に関する説明会を開催した。

QFabricは、同社が数年間にわたり進めてきたデータセンター向けネットワークの研究開発プロジェクト「Stratus Project」の成果となるものだ。このアーキテクチャの開発には3年の期間と1億ドル以上を投じたという。

細井洋一代表取締役社長は、アインシュタインの「すべての偉大なることはシンプルである」、そして美術評論家ジョン・ラスキンの「シンプルであることは複雑であるより、はるかに難しい」という2つの言葉を紹介することから会見を始めた。つまり、QFabricの特徴を一言で表すと「シンプル」となるが、ではQFabricが実現するシンプルなデータセンターネットワークとはどのようなものなのか――。

現状、データセンターネットワークの典型的な構成は、トップ・オブ・ラック(ToR)/アグリゲーション/コアの3階層構造だ。しかし、こうした従来型の多層ネットワーク構造に対しては、いくつかの課題が指摘されている。管理が複雑になること、遅延の増大、スパニングツリーにより帯域幅が有効利用できないことなどだ。そこでジュニパーは昨年5月、「3-2-1データセンター・ネットワーク・アーキテクチャ」を提唱。バーチャル・シャーシ技術の活用により、3階層構造を2階層にできるソリューションを発表したが、今回のQFabricは遂に1階層のデータセンターネットワークを実現するものとなる。

多層ネットワーク構造の課題
多層ネットワーク構造の課題

階層数が減れば、必要なスイッチの台数も減ることになるが、細井社長はこの点について「失うものがない後発ベンダーの強さ」と表現。2008年にスイッチ市場に参入したばかりの後発ベンダーだからこそ積極的に打ち出せるアーキテクチャというわけである。なお、TRILLなどの業界標準のプロトコルではなく、ジュニパー独自技術からなる点もQFabricの大きな特色といえる。

他製品と比較したQFabricの利点
他製品と比較したQFabricの利点

QFabricの具体的な構成を示したのが以下の写真だ。エッジ、インターコネクト、そして管理用のDirectorの3つのコンポーネントからなり、各エッジノードの全ポートがインターコネクトを介して互いに直接接続される。インターコネクトとエッジに分かれている点を2階層と見ることも可能かもしれないが、ファブリックからI/Oポート部分を分離したのがインターコネクトであり、「あくまでインターコネクトであって、スイッチではない」と細井社長は説明した。

QFabricの構成例
QFabricの構成例

上述のようにQFabricは3種類のコンポーネントで構成されるが、今回発表されたのはエッジのQFX3500のみだ。つまり、現時点ではまだQFabricは実現できないが、同社エンタープライズソリューションマーケティングの小川直樹氏は「複数の顧客が現在QFabricのトライアル中であるなど、市場に出す準備は着々と進んでいる」とし、今年第3四半期に出荷する計画であると説明した。

また、単体のスイッチとして見た場合のQFX3500の特徴としては、10GbEを64ポート備える高密度さ、「圧倒的な低レイテンシー」、FCoEおよびファイバーチャネルゲートウェイ機能の搭載などが挙げられるという。QFX3500の参考価格は482万8000円~(税別)で、3月中の受注開始、今四半期中の出荷開始が予定されている。

QFX3500
QFX3500

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