シスコシステムズは2010年10月26日、ボーダレスネットワークに関する記者説明会を開催した。
ボーダレスネットワークとは、シスコが昨年秋に発表したアーキテクチャで、一言で言えば、どんな場所やデバイスからでもセキュアかつシームレスな接続が可能なネットワークのことだ。シスコが近年、積極的に推進しているアーキテクチャは、このほかに「IP NGN」「データセンター」「コラボレーション」の3つしかない。つまりシスコが最も注力している領域の1つが、このボーダレスネットワークである。今回発表された新製品群により、ボーダレスネットワークは「フェーズ3」に突入するという。
シスコシステムズ 専務執行役員 ボーダレスネットワーク事業統括の木下剛氏 |
なぜボーダレスネットワークが必要なのか――。専務執行役員ボーダレスネットワーク事業統括の木下剛氏は、この点を説明するため、同社が今年8~9月に行ったグローバル調査「シスコ ワールド コネクテッド レポート」を初めに紹介した。この調査は、今後のワークプレイスやワークスタイルがどのように変革していくのかをリサーチするため、シスコが日本を含む13カ国の従業員とITプロフェッショナル、合計約2600名を対象に行ったものだ。
木下氏が興味深い結果としてまず挙げたのは、従業員の60%に上る人たちが、生産的・効率的に働くうえで必ずしもオフィスで働く必要はないと回答した点だ。しかも66%の従業員がそうしたフレキシブルなワークスタイルを望んでおり、さらに仕事を選ぶ際、待遇の良さよりも柔軟な働き方を優先すると答えた従業員も66%いたという。
調査は、米国、メキシコ、ブラジル、英国、フランス、スペイン、ドイツ、イタリア、ロシア、インド、中国、日本、オーストラリアの13カ国で実施 |
一方、モバイルワークやテレワークといった、こうした新しいワークスタイルに対応するための準備がポリシー面および技術面で整っているかというと、45%のITプロフェッショナルが「できていない」と回答したとのこと。ボーダレスネットワークをいかに整備していくかが、課題となっているのである。
上記はグローバルでの結果だが、日本の従業員はどう考えているのだろうか。レポートによると、オフィス外でも業務遂行は可能と答えたのは44%と、グローバル平均を下回った。しかし木下氏は、これは日本企業におけるボーダレスネットワークの必要性の低さを意味しないという。その理由の1つは、日本企業がグローバル進出していくうえで、海外における従業員のこうしたトレンドは無視できないため。
オフィス外でも業務遂行が可能と考える従業員の割合がグローバル平均よりも低い日本 |
もう1つの理由は、日本企業の大きな課題であるホワイトカラーの生産性向上に、ボーダレスネットワークは寄与するからというものだ。調査では、オフィス外での労働が1日2時間以上に及ぶ従業員の割合は、日本では61%に上ったという。その一方、現在、社外からのデータアクセス環境がない従業員は62%もいた。「1日の労働時間の25%がオフラインとなっている。そこに、ITにアクセスできる環境をもたらすことにより、日本のホワイトカラーの生産性を上げる余地は大いにある」と木下氏は語った。
また、クラウド化の潮流とも、ボーダレスネットワークは密接に結び付いているという。業務システムが企業内部にあった従来、セキュリティに求められた要件は「社内のアセットを外部からの攻撃から守ること」「内部からの情報漏えいを防ぐこと」の大きく2つだ。しかし、外部のICTインフラを活用するクラウド時代において、求められる要件は大きく変わってくる。木下氏はクラウド時代に必要な要件として、コラボレーション、モビリティ、リッチメディア体験(ビデオ)、クラウドサービスの利用の4つを挙げたうえで、ボーダレスネットワークは「セキュアなクラウドサービスの利用をエンド・トゥ・エンドで実現する」と説明。さらに、「データセンターだけでなく、キャンパス(本社)やブランチ(支社・支店)も含めたクラウド時代の新しいネットワーク基盤になる」と位置づけた。
ボーダレスネットワークはエンド・エンドでセキュアにクラウドへ対応するための基盤になるという |