ソフトバンク、京都大学、金沢工業大学は2022年10月6日、ミリ波の通信装置にワイヤレス電力伝送の機能を実装したシステムの開発と実験に成功したと発表した。
通信とワイヤレス電力伝送を使い分ける
NICT(国立研究開発法人情報通信研究機構)の「Beyond 5G研究開発促進事業」に係る令和3年度新規委託研究の公募(第1回)で採択された、「完全ワイヤレス社会実現を目指したワイヤレス電力伝送の高周波化および通信との融合技術」に関する共同研究の具体的な成果となるものだ。
今回開発したシステムは、ミリ波の通信とワイヤレス電力伝送が同一のアンテナを共用し、アンテナのビームフォーミング機能を活用することで、ミリ波の周波数帯域を通信とワイヤレス電力伝送で時間と空間ごとに使い分けることを可能にする。
「基地局は夜間になると通信の需要が減るため稼働率が下がるように設計されている。稼働率が低下した段階でリソースの一部をワイヤレス電力伝送に割り当てるといった方法が考えられる」とソフトバンク 基盤技術研究室 無線電力伝送研究開発課 課長代行の長谷川直輝氏は説明した。
基地局の非通信時のリソースを有効利用する
従来、ワイヤレス電力伝送システムはISMバンドを利用しており、他の無線局との干渉を避けなければならないが、今回のシステムは通信用に割り当てられた帯域を使うため、干渉を調整する必要がない。
ミリ波で高効率に電力伝送
また、ミリ波を活用するメリットは主に2点ある。
ミリ波は比較的ひっ迫度が低い
1つめに、国内の周波数の利用状況は6GHz帯以下の帯域に集中しており、ミリ波はひっ迫度が低いことだ。
2つめに、アンテナの開口面積が一定の場合、高い周波数帯の方がアンテナの利得が増強され、高効率に電力伝送を行うことができる。