――iPhoneをきっかけに日本でもようやくスマートフォンが普及し始めたように見えます。
辻村 ドコモの2010年度の総販売台数は1800万超と予想しています。そのうちスマートフォンは約100万台と全体の6~7%程度で、逆に言えば、93~94%はフィーチャーフォンと呼ばれる既存端末が占めると見ています。
ただ、米国ではすでにスマートフォンの割合が20%を超えています。国内でもXperiaの販売台数は5月末時点で20万台以上と好調で、スマートフォンのニーズは確実に高まっています。今後ラインナップも充実してくることで、スマートフォンの割合はもっと増えるはずです。その意味で、「スマートフォン新時代」と呼べる時代が始まりつつあると思います。
――AndroidなどオープンOSを搭載したスマートフォンの普及が進むと、通信事業者による垂直統合型ビジネスモデルが変化せざるをえないのではありませんか。
辻村 携帯電話やスマートフォンでは、電源を入れたときに最初に立ち上がるファースト画面に非常に価値があり、それを誰が押さえるかが重要です。ドコモの携帯電話のファースト画面は我々が決めていますが、Xperiaはソニー・エリクソンが決めています。すなわち、スマートフォン化が進むと、通信事業者の土管化リスクが高まる可能性があります。
――土管化を回避するために、ドコモとしてどのような取り組みをしていくのですか。
辻村 ユーザーの使い勝手を考え、ニーズの高いサービスを提供していきます。
具体的には、キャリアメールを取り入れていきます。ドコモでは今年9月からスマートフォン向けISP「spモード」の提供を開始する予定で、iモードのメールアドレスをスマートフォンでも利用できるようになります。
キャリアメールと並びお客様からの要望が多いのが、「おサイフケータイ」機能への対応です。ただ、iモードメールは既存の端末にソフトウェアをダウンロードすれば対応できるのですが、おサイフケータイはFeliCaチップを本体に埋め込まなくてはならず、既存の端末では対応できません。おサイフケータイ機能を搭載したスマートフォンは今年度中に発売する予定です。
その後は、iチャネルやiコンシェルなど、iモードで培ったさまざまなサービスをスマートフォンに入れて行く予定です。
端末はフィーチャーフォンやスマートフォンに加えて、iPadのようなタブレット型、PC、テレビとマルチスクリーン化します。ユーザーは5つぐらいの選択肢の中から、自分の生活パターンに合わせて2~3種類のスクリーンを選ぶようになると思います。そうなったときに我々がプラットフォーマーとして提供したいのが、「マルチデバイスの同期」です。
例えば、携帯電話のアドレス帳を更新するとスマートフォンやタブレット端末のアドレス帳も更新されるというような機能や、一部ではすでに実現されていますが、電車の中で携帯電話やスマートフォンで電子書籍を読み、自宅に帰ってから続きを電子書籍端末やPCで読むといった機能です。
こうしたデバイスを超えてクロスボーダーの心地よさを提供しようとしたとき、通信事業者の出番があるはずです。
また、携帯電話用に小さく短く作り込んだニュースをタブレット端末で見てもあまり面白くありません。同じコンテンツでも画面の大きさに合わせて変換して提供する必要があります。コンテンツ変換はコンテンツプロバイダーの作業ですが、その際、通信事業者も貢献できることがあると考えています。