おサイフケータイの国際標準仕様「NFC」とは何か?

機器間で無線通信を行うための技術NFCに注目が集まっている。特に携帯電話に搭載されれば、世界各国で「おサイフケータイ」と同様のサービスが利用できるようになる。

NFCで実現する3つの機能

NFCには、大きく分けて3つの機能がある。第一に、NFC対応機器間で無線通信を行うPeer to Peer機能だ。とはいえ、数百kbpsというやや低速の通信となるため、アドレスデータの交換や画像のやり取りなど小容量データの送受信や、Bluetoothなどのより高速なデータ通信のための最初の機器間認証を簡単に行う、といった用途が想定されている。

第二に、NFC対応端末で、ISO/IEC14443やFeliCa等のICカードを読み書きするリーダ/ライタ機能である。この機能を利用したサービスとして、「電子ポスター」が注目されている。これは、ICタグをポスターに埋め込み、それをNFC対応の携帯電話で読み取っていろいろな情報や割引クーポンを取得する、というサービスである。日本でもソフトバンクやKDDIが、ショッピングモールや書店で電子ポスターのトライアルを行っている。また、電子マネーの残高を読み取って確認したり、将来的には携帯電話を店頭の決済用端末として利用する、といったことも検討されている。

KDDIと大日本印刷による電子ポスターのトライアルの様子(イメージ図) KDDIと大日本印刷による電子ポスターのトライアルの様子(イメージ図)
出典:KDDI

第三に、非接触ICカードと同様、電子マネーやクレジットカード、乗車券、社員証などとして利用する機能がある。これは「おサイフケータイ」と同じサービスで、特にNFC Mobileにおいてはこの機能が最も注目されている。VisaやMasterCardなどの国際決済ブランドが、世界各国でNFCを用いたクレジット決済の実証実験を行っているほか、ロンドン、ニューヨーク、シンガポールなど大都市の非接触IC交通乗車券もNFCへの対応を検討し、実証実験を行っているところが多い。

MasterCardの非接触決済サービス「Paypass」
MasterCardの非接触決済サービス「Paypass」 出典:MasterCard

「おサイフケータイ」との相違

ここまで、NFCについて説明しながら、所々おサイフケータイを引き合いに出してきた。実は、NFCでできることはほぼすべておサイフケータイで実現可能である。では、NFC Mobileとおサイフケータイの相違点は何であろうか。

最も重要なのは、おサイフケータイは日本独自の仕様であるのに対し、NFCは国際標準仕様である、という点だ。おサイフケータイがどんなに便利であっても、そのサービス範囲は日本国内にとどまっていた(ドコモがクレジットサービス「iD」の加盟店をグアムなどに広げている例はある)が、NFCであれば、世界中のどこでも利用できるサービスが実現可能である。

また、現在おサイフケータイのサービスを提供している企業の中には海外にも拠点を持つところが少なくないが、NFCに対応すれば、海外でも同じサービスを提供することが可能になるだろう。

さらに、携帯電話端末やリーダ/ライタが国際標準に則って大量に生産される結果、調達コストが低下することが期待される。インフラにかかるコストが下がれば、さまざまな企業がNFCサービスを提供しやすくなり、より多くのユニークなサービスが登場することも予想される。

月刊テレコミュニケーション2010年11月号から一部再編集のうえ転載(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

田中大輔(たなか・だいすけ)

2002年野村総合研究所入社。以来、情報・通信分野のコンサルティング業務に従事。専門は携帯電話市場、情報通信市場、決済サービス市場における事業戦略およびマーケティング戦略など。共著として、「電子決済ビジネス」「2015年の決済サービス」「企業通貨マーケティング」「これから情報・通信市場で何が起こるのか」など

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