企業ネットワーク最前線

イチからわかるネットワーク時刻同期

文◎坪田弘樹(編集部) 2022.01.13

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5Gの普及等を背景に、通信ネットワークにおける時刻同期の必要性が高まっている。リアルタイムアプリの安定運用に不可欠なこの時刻同期は、どのような仕組みで実現されるのか。その基本から解説する。

基準時刻の取得方法「GNSSで高精度・確度に取得 公開サーバーも選択肢に」時刻を同期させるためには、まず基準となる正しい時刻情報を取得しなければならない。なお、時刻の正確性のことは確度、時刻のばらつきの小ささは精度と呼ぶ。

時刻情報の取得方法は大きく2つある。(1)GNSS受信機を使ってGPS/GNSS(全球測位衛星システム)信号から得る方法と、(2)NICT等が提供する時刻供給サービスを使う方法だ。

(1)のGNSS方式は、測位衛星からの信号をGNSS受信機で取得して測位演算を行うことで時刻を算出する。UTCとの誤差は±1μs以下と確度が高く、受信機の性能によっては、nsオーダーの正確な時刻も取得可能だ。GNSS受信機を製造・販売する古野電気 システム機器事業部 開発部 要素技術課 主任技師の橋本邦彦氏によれば、「原子時計と同等の性能で時刻を出力する。5G基地局や列車無線、警察・消防・防災等の業務用無線でも、GNSS受信機を使うケースが増えている」。

GNSSから時刻を取得する装置について、ITU-TはUTCとの最大誤差を次のように定めている。国際標準(G.8272)の時刻同期基準であるPRTC-Aの誤差は100ns以内、より厳しいPRTC-Bは40ns以内とされている。

測位衛星は米国のGPSのほか、ロシアのGLONASS、欧州のGalileo、中国のBeiDou、日本のみちびき(QZSS)がある。複数の衛星に対応するマルチGNSS受信機を用いると衛星信号を捉えやすくなり、時刻情報の確度を高めることができる。

アンテナ・受信機設置が面倒なら

(2)の時刻供給サービスは、NICTや通信事業者等が実施している。

NICTでは、標準電波(電波時計)のほか、インターネットで配信する「NICT公開NTPサービス」、ひかり電話のデータコネクトサービスを使う「光テレホンJJY」等で時刻情報を供給している。

こうした時刻供給サービスは、ネットワーク遅延の影響により、GNSS信号を基に自前で時刻を割り出すよりも確度で劣る。光テレホンJJYは±1ミリ秒(ms:1000分の1秒)。公開NTPサービスは、インターネット環境によって100ms程度まで誤差が生じる。

このように確度は劣るものの、GNSS方式のように空が開けた屋上等に専用アンテナ/受信機を設置し、時刻同期装置まで同軸ケーブルで信号を届ける必要がない。導入・運用コストの面で優れるため、多くのケースでは(2)時刻供給サービスで時刻情報を取得し、これを管理する「タイムサーバー」からLAN内のデバイスへ配信する方式が広く採用されてきた。

この時刻情報取得とLAN内への配信に使われてきたプロトコルが、NTP(Network Time Protocol)である。また最近では、NTPよりも高精度な時刻同期を可能にするPTP(Precision Time Protocol)も普及しており、GNSS受信機で取得した正確な時刻情報をPTPで配信する例が増えてきた。図表3は、NTPとPTPの違いをまとめたものだ。次に、両方式の仕組みを見ていこう。

 

図表3 NTPとPTPの違い

  NTP  PTP 
一般的な同期精度   ミリ秒レベル  ナノ〜マイクロ秒レベル
 タイムスタンプ方法  一般的にソフトウェア  一般的にハードウェア
 On Path Support  なし  Boundary Clock Transparent Clock
 試験・測定  特段必要としない  プロトコルチェック 同期精度確認など

出典:丸文資料

 

 

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