NW視点で見る3大クラウドの違い サウザンドアイズに聞くクラウド選びのポイント

世界中に散らばる“監視の眼”を駆使して、刻々と変化するインターネットの状況を可視化しているサウザンドアイズ。同社に、“ネットワークの視点から”クラウドサービスを選択する際のポイントを尋ねた。

接続形態でメガクラウドを分類アクティブモニタリングは、「SaaSが利用できなくなった」「この拠点だけレスポンスが遅い」などの障害・トラブルが発生した際に、その原因箇所を迅速に特定し対処するのに役立つが、メリットはそれだけではない。もう1つ、新たにクラウドを導入する際や、他の事業者に切り替えるときの評価・選定にも使える。

サウザンドアイズは2018年と2019年の2度、主要クラウドのパフォーマンスを測定した結果を「Cloud Performance Benchmark」レポートとして公表している。2018年にはAWSとMicrosoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)の3大クラウドを、2019年にはIBM CloudとAlibaba Cloudを加えた5つを調査した。その結果から、クラウドを選定・評価する際に役立つポイントを紹介しよう。

1つめが、クラウド事業者によってバックボーンネットワークへのアクセス方法が異なる点だ。サウザンドアイズ・ジャパン システムエンジニアのジャック・マーティン氏によれば、「ユーザーがクラウドにアクセスする際、基本的にインターネットを通ってクラウドのエッジノードに入るタイプと、ユーザーにできるだけ近いところでクラウド事業者のバックボーンに入るタイプの2つに分かれる」(図表1)。

図表1 2タイプのクラウド接続
図表1 2タイプのクラウド接続

AWSとAlibabaは前者の「インターネット依存型」であり、AzureとGCPは後者の「バックボーン拡張型」だ。IBM Cloudはリージョンによって異なるハイブリッド型になる(図表2)。

図表2 3タイプのアプローチ
図表2 3タイプのアプローチ

ロケーションに大きく依存バックボーン拡張型のほうが概ね品質の安定性に優れる。ただし、すべてのケースに当てはまるわけでもない。「クラウドは常に進化し続けている」(マーティン氏)からだ。

それを表したのが図表3だ。

図表3 3大クラウド(AWS/Azure/GCP)における双方向遅延の比較
-Hosting Region:Munbai, India
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図表3 3大クラウド(AWS/Azure/GCP)における双方向遅延の比較-Hosting Region:Munbai, India

【Ⅰ】で示した部分は、アジアの各地域からインドのムンバイリージョンにアクセスした際の双方向遅延を比較している。黄(AWS)/青(Azure)・橙(GCP)の棒グラフが平均遅延を、灰色の線がゆらぎを表す。2018年(左)と2019年(右)を比べると、全体的に平均遅延が減少していること、そして、インターネット依存型であるAWSのゆらぎがGCPと同等レベルまで小さくなっていることがわかる。

要因は、「ルーティングを最適化した」(マーティン氏)ことだ。

例えば、韓国からムンバイへのアクセス経路を調べると、2018年時点では米ニューヨークを経由してAWSのバックボーンに入っていたが、2019年にはシンガポール経由でAWSバックボーンに辿り着いていた。ホップ数もかなり減っている。

【Ⅱ】も注目だ。欧州からインドへのアクセスにおいて、バックボーン依存型であるGCPの遅延がAWS/Azureの約3倍にもなっている。原因は、GCPバックボーンネットワークの経路にある。欧州から東へ向かいインドに至るパスがないのだ。地球を西廻り(大西洋から北米、太平洋)してインドに到達するため、遅延が増大する。

GCPのバックボーンも今後改善されるだろうが、肝心なのは、同じクラウドでもロケーションによって通信品質が大きく変わるという点だ。「クラウドを選定する前に実際に検証することが大切」とマーティン氏は強調する。利用目的やコストに応じて複数のクラウドを使い分けるケースも最近は増えているが、それに加えて、拠点やクラウドのロケーション、ネットワーク品質も加味することでユーザーの体感品質を高めることができる。

月刊テレコミュニケーション2020年2月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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