NTTコム、ローカル5G参入の狙い スマートファクトリー推進の起爆剤に

顧客企業のデジタル変革推進に向けたキーパーツの1つとして、ローカル5G活用の準備を進めるNTTコミュニケーションズ。2020年2月には、実証実験も開始し、多様な産業のDX推進に活用する計画だ。

「ローカル5Gへの期待と関心は非常に高い。お客様が抱えている課題にマッチする無線通信がこれまでなかったことがその理由だろう。『この不満をなんとかできないか』というご相談を多くいただいている」

そう語るのは、NTTコミュニケーションズ(以下、NTTコム)の技術開発部で技術戦略部門長を務める貞田洋明氏だ。製造業を中心に問い合わせが相次いでいるという。

ローカル5Gは、携帯電話事業者以外の一般企業や自治体が自営型の5Gネットワークを構築・運用するものだ。NTT東日本/西日本、NECや富士通などが次々にローカル5Gシステムの構築支援に乗り出している。NTTコムも庄司哲也社長が10月に「ドコモがカバーしきれないところを我々やNTT東西で提供していきたい」と参入の意向を示していた。

NTTコミュニケーションズ 技術開発部 技術戦略部門 部門長の貞田洋明氏(左)と、技術開発部 担当課長の太田和彦氏
NTTコミュニケーションズ 技術開発部 技術戦略部門 部門長の貞田洋明氏(左)と、
技術開発部 担当課長の太田和彦氏

ローカル5Gをスマート工場の基盤システムにNTTコムはこのローカル5Gをどのように活用するのか。貞田氏は、「我々の『Smart Data Platform』のアクセス回線として、大容量通信や超低遅延・高信頼性が求められるところで使う。有線ネットワークを無線化する場面や、LTE/Wi-Fiでは信頼性が足りないケースに有用だ」と話す。

Smart Data Platformとは、NTTコムが9月末から提供を始めたもので、データ利活用のための様々な機能を備える(図表1)。ユーザーは、データ分析用のAIやセキュリティなどのデータ分析・流通に必要な機能や、現場からデータを収集するためのSD-WAN、eSIMなどの通信関連機能を選んで利用できる。現在はフレッツ光、LTEサービス、Wi-Fi等をアクセス回線として用いているが、ここにローカル5Gを追加すれば適用できる範囲が広がる。

図表1 Smart Data Platformの全体イメージ
図表1 Smart Data Platformの全体イメージ

特に期待されるのがスマートファクトリーの分野だ。工場を無線化する場合に要求される通信品質・信頼性の要求条件は非常に厳しいものだが、5Gならそれに応えられる可能性が高い。「光ファイバーからローカル5Gに置き換えて工場内に自由度を持たせる使い方がメインになる」(貞田氏)

技術開発部 担当課長の太田和彦氏も「数年前から、ITとOTの融合に関するご相談は相当来ていた」と語る。現在はWi-Fiを使っている工場が多いが、複数のシステム間で混信や電波干渉が起こったり、ハンドオーバーが上手くいかなかったりと必ずしもユーザーの要望を満たしきれていない状況だ。また、「不正アクセスやなりすましなどのセキュリティへの懸念も大きい。ローカル5Gなら解決できるのではないか」と期待する。

このように5Gの特性を活かしながら、上位のアプリケーションや機能をワンストップで提供し、顧客企業のデジタルトランスフォーメーションを支援するというのがNTTコムの戦略だ。

月刊テレコミュニケーション2020年1月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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