[特集]ロボット×IoTが世界を変える 第2回「自分の分身をどこでも派遣」、テレプレゼンスロボットが変える企業コミュニケーションの未来

離れたオフィス等に置かれたロボットにログインし、自らの分身として使う――。そんな“コピーロボット”や“分身の術”を思い起こさせるテレプレゼンスロボットがジワジワと普及し始めている。

オフィスに来ずに仕事をする在宅勤務者のために、会社がその社員の代理を務めるロボットを用意する――。近い将来、そんな光景が当たり前になるかもしれない。

テレワークが一般的な米国では2年ほど前から「テレプレゼンスロボット」がジワジワと普及し始めている。ひと言で言えば“動くビデオ会議”だ。時間や距離の都合により行けない場所で、自分の目・耳・口の代わりを務めてくれるロボットである。カメラとマイク、スピーカーとモニタを備え、映像と音声をネットワーク経由でやり取りできる点は、ビデオ会議(テレビ会議やWeb会議)とまったく同じ。異なるのは、遠隔操作によって移動させることができたり、移動できないまでも首を回すようにカメラとモニタの向きを変えられるという点だ。

Double Roboticsのテレプレゼンスロボット「Double」
Double Roboticsのテレプレゼンスロボット「Double」(“代理”の意味)。セグウェイのような自走式のスタンドにiPadを装着し、離れた場所からWebブラウザやスマホアプリを使って操作、音声と映像でコミュニケーションが行える。iPadに映っているのは、iPresenceのリモートプレゼンスソリューションスペシャリスト 藤永晴人氏

このテレプレゼンスロボットをオフィスに置いておけば、遠隔地からログインし、自分の“分身”としてオフィス内を周り(あるいは見回して)、同僚や上司等とコミュニケーションできる。

2014年頃から複数の企業がテレプレゼンスロボットの販売を始め、米国では医療や教育、製造業の現場等で利用されるほか、在宅勤務者のために導入する企業も現れている。また、ビデオ会議ベンダーが自社のプラットフォーム向けの新端末として使う動きも出てきている。

“そこにいる”という存在感使い方はさまざまだ。テレワーカーが自宅からログインして操作してもいいし、異なる拠点にいる社員が操作してもいい。例えば、あるプロジェクトのボスが本社にいて、遠隔拠点でそのチームメンバーが開発を行っているような場合、ボスが遠隔拠点のテレプレゼンスロボットを操作してメンバーの席を周ったり、打ち合わせに参加したり、開発中の試作品を見たり、あるいはオフィスの状況を見て環境の変化を確かめたりできる(図表1)。関係者すべてが時間を合わせて集まり報告や打ち合わせを行うビデオ会議とは、まったく異なる使い方ができるのだ。

図表1 ビデオ会議とテレプレゼンスロボットの違い
図表1 ビデオ会議とテレプレゼンスロボットの違い

国内でテレプレゼンスロボットを専門に取り扱うiPresence(神戸市)のリモートプレゼンスソリューションスペシャリスト、藤永晴人氏は「テレプレゼンスロボットの良さは、“そこにいる”という存在感。対面に近い感覚でコミュニケーションできる」と話す。

テレプレゼンスロボットを開発しているのは北米企業が中心だ。日本国内で販売されているものには、Double Roboticsの「Double」、Revolve Roboticsの「Kubi」、Suitable Technologiesの「BeamPro」「Beam+」などがある。なお、Kubiは移動はできず、テーブル等に置いて使い、遠隔操作で向きを上下左右に変えられる。持ち運びも容易だ。

このほか、ロボット掃除機「ルンバ」のアイロボットとシスコシステムズが共同開発した「Ava 500」が、14年春から北米と欧州の一部で販売されている。シスコのビデオ会議を自走ロボットに統合したものだ。

月刊テレコミュニケーション2016年4月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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