国立研究開発法人 海洋研究開発機構(JAMSTEC)が2022年1月26日に記者説明会を開き、「1Gbps×100m超の高速海中光ワイヤレス通信」に成功したと発表した。
2021年11月に相模湾で行った実験で達成したもので、JAMSTEC 研究プラットフォーム運用開発部門(MarE3)の石橋正二郎氏は、「遠くまで届かせる場合、数メガから十数Mbps程度の速度だったこれまでの製品と比べて、桁が変わる」とその意義を強調した。
JAMSTEC 研究プラットフォーム運用開発部門(MarE3)の石橋正二郎氏
海中光ワイヤレス通信は、レーザー光(可視光)を用いて高速大容量通信を実現するものだ。
水中の無線通信に使われる技術には音響通信があるが、長距離伝送が可能な反面、通信速度は数十kbps程度で画像や映像等の大容量コンテンツの伝送には適さない。陸上の無線通信に例えると、スマートフォン登場よりはるか以前の「2G」レベルだ。
目指すは「水中で4Gレベル」
これに代わる技術として研究開発が進められてきた海中光ワイヤレス通信は現在、「3G」レベルまで到達している。例えば、島津製作所が数十Mbpsクラスの速度が出る光モデムを製品化。英Sonardyneも、伝送距離が最大150m、通信速度が2~10Mbpsの水中光通信システムを提供している。
石橋氏によれば、海中光通信も陸上無線と同様に「距離と速度がトレードオフ」の関係にあり、現行製品でも数mの近距離であれば、数百Mbpsの高速通信が可能という。伝送距離を伸ばせば伸ばすほど、通信速度は落ちていくことになる。
この「速度×距離」で表される性能を飛躍的に高めることが、今回行った実験の目的だ。海中レーザー通信・制御技術に長けるトリマティスが主体となって新たな送受信機を開発。数回にわたる水槽実験を経て、実海域で「4G」レベルを目指す実験に臨んだ。