特定ベンダーに左右されないフロントホール構築を実現するO-RAN無線アクセスネットワーク(RAN)を構築する際、従来は同一ベンダーまたはベンダー群の装置を揃える必要があった。
このため、RAN構築に利用する装置を自由に選定することができず、たとえば状況に応じて無線ユニット(RU:Radio Unit)を柔軟に選択したいと考えても、そのベンダーが提供するRUから選択せざるをえなかった。
必要な機器の調達可否が特定のベンダーに左右されることも大きなリスクである。たとえば昨今の半導体不足によってベンダー側で製造することが不可能になり、当初の計画どおりにRANを構築できなくなるといった事態が考えられる。
特定ベンダーに依存すると競争原理が働かなくなるため、装置の価格が高止まりする懸念も無視できない。
こうした課題を解消するべく、モバイルキャリアやネットワークインフラベンダー、チップセットサプライヤーなどが集まり、オープンなRANの規格と提案の作成を目的として組織されたのがO-RANアライアンスである。
O-RANへの移行で新たな課題となる「テスト」RANがオープン化される最大のメリットは、同一ベンダーであることに縛られず、自由にRAN構築に必要な装置を選定できることだ。これによってモバイルキャリアがマルチベンダー展開を図るようになれば、必然的にサプライヤーエコシステム内での競争が促進されることになり、コスト効率の向上にもつながるだろう。
イノベーションが加速することも見逃せないポイントである。たとえば小規模なベンダーが革新的な装置を開発したとしても、RAN全体を構築する装置を取り揃えられなければ市場に展開することはできない。
しかし規格がオープン化されていれば、ほかのベンダーの製品と組み合わせて利用することが可能になるため、RAN全体の装置を取り揃える必要なく市場に装置を展開できるわけだ。
また大企業よりも俊敏に動ける小規模ベンダーが市場に参入することで、イノベーションが促進されることも期待できるポイントとして挙げられている。
このようにO-RANは5Gのフロントホール構築において大きなメリットをもたらす存在だが、一方で新たな課題として浮かび上がっているのがテストである。
図表1 O-RANを採用した、5Gの無線基地局(gNB)内の構成