第5期:2016年~現在 企業データセンターの変化この時期は「デジタルトランスフォーメーション」「働き方改革」などのキーワードから始まり、これら企業変革の中心にITが位置するようになりました。その中で企業ネットワークに大きな変化が訪れています。
第1回でも触れましたが、企業データセンター(DC)ではサーバ仮想化技術を使ったサーバ集約が継続しています。当初はこれらの導入と集約を実現すれば社内外から高い評価を得られましたが、現場ではそこから1歩進み、運用や基盤拡張、更新時に次のような課題に直面するようになりました。
1:広帯域・低遅延
サーバ、ストレージなどが仮想化されDC内のトラフィックは内部の横方向通信「East-West(東西)」が中心となりました。これはネットワーク構成図の上下を北と南、左右を西と東に見立てた考え方で、仮想化以前はネットワーク図の上部に描かれる外部ネットワークとの通信が主流(North-South:南北)、でしたが、サーバ間(東西)の通信が増えたのです。
横方向の通信の大部分はライブマイグレーションやストレージの仮想化によるものです。これらを快適に使うためには高帯域と低遅延であることが必要となりました。そのため、サーバとの接続は従来の1Gbps中心から10Gbps、25Gbps、40Gbpsへと変化し、スイッチ間では更に広帯域が必要になりました。特にストレージ移行を伴う場合には、従来では想定できない数十TB~数百TBのデータ転送が必要になっています。
2:高可用性・メンテナンス性
仮想化により複数のシステムが複数の物理サーバに分散配置されることになりました。そのためバージョンアップなどのメンテナンスによる停止も難しくなり、障害発生時には影響範囲も大きくなりました。
3:拡張性
仮想化は柔軟性が特徴です。サーバ集約もまとめて行うのではなく、システム更新に合わせ少しずつ行うことが一般的です。そのため、サーバの追加などが常に発生することから、ネットワークの拡張性も重要になりました。
ここで重要なことは、インフラの中心がサーバからネットワークへ変わったことです。仮想化が進むことで、ほとんどのコンピューティング、ストレージはネットワークを使用して相互接続が行われて初めて機能する時代へと大きく変わりました。これまではシステム更新時に物理サーバが増えるタイミングでネットワークを拡張していたものが、仮想基盤を含めあらかじめネットワークを用意する必要がある時代になったと言えるでしょう(図表1)。
図表1 データセンターアーキテクチャの変遷(画像クリックで拡大)