Office、Outlookなどからも使えるLyncの機能
ここまでLync 2010の画面を使ってIMとプレゼンスについて見てきたが、実はLyncの機能はOfficeドキュメントやOutlook、SharePointから直接利用することができる。下の写真9は、Outlookの例だ。それぞれの名前の横にはプレゼンスアイコンが表示され、名前にマウスオーバーすると連絡先カードが現れ、コミュニケーションを開始することが可能だ。また、例えばExcelファイルの作成者に質問したいときや、SharePoint上に置いたWordドキュメントの共同編集者に一時的に編集中の段落のロックを解除してほしいときなど、ツールを切り替えることなく作業中のアプリケーションからLyncクライアントと同様のユーザーインターフェースでコミュニケーションを始められる。
(写真9)Outlook上にもご覧のようにプレゼンス情報が。名前にマウスオーバーすると連絡先カードが表示され、アプリを切り替えずにそのままコミュニケーションを始められる |
「スキル検索」で社内の見知らぬ専門家に即相談
このようにIMとプレゼンス機能は、効率的でリッチなコミュニケーション環境を提供してくれるが、従来つながっていなかった「人」と「人」をつなげ、コラボレーションを活性化させるという側面も忘れてはならないポイントだ。
その端的な例が、Lyncで初搭載された「スキル検索」の機能である。SharePointとの連携により実現されているスキル検索は、自分の欲しい情報を持っている人を探せる機能だ。
営業マンA氏が大事な顧客からX社のサーバー仮想化技術に関する相談を受けたとしよう。その顧客はかなり前向きに導入を考えており、すぐに詳細な提案を持って来て欲しいという。しかし、あいにくA氏は仮想化とはまったく関係のない部署で、誰に相談していいのかさえ分からない。スキル検索が役立つのは、例えばそんなときである。
スキル検索では、登録されたプロフィール情報だけでなく、SharePoint上で共有されているドキュメントの内容も参照し、目的のスキルや専門知識などを持っている相手を見つけてくれる。例えば、Lync担当というわけではないが、Lyncの提案を得意としている営業マンがいたとする。当然その営業マンが作成した提案書には「Lync」という言葉がたくさん使われているはずだ。こうした正式な担当者でない人も、スキル検索ならば的確に探し出してくれる。
上司や同僚などを辿って、詳しい人を見つけることも可能だろうが、まったく違うのはスピード感だ。組織経由では平気で数日が過ぎてしまってもおかしくないし、すぐ辿りつかなければ、あきらめてもしまうだろう。一方、スキル検索なら一瞬。しかも、その人が今、連絡可能かどうかもプレゼンスで一目瞭然だ。
プロジェクトごとに必要なチーム編成を行う「プロジェクト型組織」が多い欧米企業と比べると、日本企業は営業/開発/経理など機能ごとにチームが編成される「機能別組織」の形態を取っていることが多い。それぞれにメリットはあるが、機能別組織の課題の1つは、似たスキルや経験を持った人材ばかりの集団となってしまうことだ。ビジネスにおける目的を達成するうえでは当然、多様な経験知が役立つ場面が数多くある。スキル検索は、社内に存在しながら従来はあまり活用できなかった他部門などの経験・ノウハウなどの有効利用を可能にするのである。
ところで、「スキル検索はSharePoint単体だけでも利用可能なのだから、必要なのはSharePointだけで、Lyncは関係ないのでは」と考える人もいるかもしれない。だが、それはちょっと違う。なぜならIMは、知らない人同士が円滑にコミュニケーションするツールとしても最適だからである。
メールでは、いつ返事がもらえるかが分からない。込み入った内容の場合は、返事を書くのも大変だ。また、電話も相手の時間を強制的に拘束するため、忙しいときなどは迷惑である。
一方、Lyncはどうか。プレゼンスで相手の状態が分かるし、まずはテキストで今相談に乗ってもらえるかメッセージを送り、それから必要に応じて音声やビデオ、アプリケーション共有などを使ったリアルタイムコミュニケーションに切り替えることもできる。敷居はぐっと低く、そのうえ非常に豊かなコミュニケーションが行える。
スキル検索以外にも、前述したように共有されている提案書や技術資料などから直接その作成者にコンタクトを取ったり、組織ツリー(写真10)から目的の人を探したり、Lyncは既存の組織・チームの枠を超えたコラボレーションを促進させる。
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(写真10)その人の上司や同僚などがリスト表示される組織ツリー |
組織論では、組織は(1)共通目的、(2)貢献意欲、(3)コミュニケーションから成り立つとされている。Lyncはこの3要素のうちの1つであるコミュニケーションに革新をもたらすツールだ。
しかも、単にコミュニケーションを効率化・スピード化するだけのツールではない。身近にいる上司や同僚のみならず、必要なスキル・専門知識を持った、他部門や他拠点などにいる見知らぬ社員との協働作業も円滑化させる。
どうすれば組織内の人材を最大限に活かすことができるのか――。Lyncは、あらゆる企業にとって長らく課題であり続けているこの問題に対する1つの解答になるのである。
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