特定のエリア内で5Gを自営網として構築できるローカル5G。企業や自治体、大学などが高い関心を持っているが、いざ導入する段階になると足踏みしてしまうケースが少なくない。最大の理由がコストだ。ローカル5G専用の製品はまだそれほど市場に出回っておらず、大手ベンダーのキャリア向け製品をそのまま転用することになり、億単位のコストがかかってしまう。
このままでは、様々な主体が5Gを利用するというローカル5G本来の目的を達成することは難しい──。ネットワーク機器ベンダーのAPRESIA Systemsは今年4月、現状を打破すべく、新たなローカル5Gシステム「ApresiaAEROシリーズ」の販売を開始した。
現在までに200件以上の問い合わせ 後継製品で柔軟性・超低遅延を実現ApresiaAEROシリーズは、サブ6帯・SA(スタンドアローン)方式に対応しており、5G単体でシステムを構成することができる。
また、4つの製品群のうちUE(端末)とRU(Radio Unit)、CU/DU(Central Unit/Distributed Unit)は、オープン仕様に基づいて自由に組み合わせて利用できることを目指すO-RAN準拠のOEM製品を採用。5Gコアの「Apresia AERO-5GC-A」については、オープンソースの「free5GC」をベースに自社開発した(図表)。これにより、「構築費用を数千万円程度まで引き下げることに成功しました」とAPRESIA Systems ローカル5G プロジェクトマネージャーの渡辺純平氏は話す。
図表 ApresiaAEROシリーズの構成
ApresiaAEROシリーズの特長は、低価格化だけではない。
ローカル5Gではモバイルキャリアと同じ性能を求められない大容量や多数同時接続といった機能はスペックダウンする一方、省スペース性を向上させることでローカル5Gに最適化している。
特筆すべきは、「準同期TDD」にも対応していることだ。
これは大容量の4K映像伝送などのユースケースを想定し、上り/下りの帯域リソースの比率を全国キャリアと同じ1:3から、一部のフレームのみ異なるダウンロード・アップロードパターンを使用するためのものだ。
準同期TDDを制度化したのは日本のローカル5Gが初めてであり、当然のことながら大手ベンダー製品は対応していない。「我々はローカル5G向けに特化しているからこそ開発しました」と渡辺氏は胸を張る。
ApresiaAEROシリーズに対しては発売開始以来、NIerや製造業、インフラ事業者などから200件以上の問い合わせが寄せられている。低価格に加えて、スイッチ製品で培ってきた品質の高さや事前検証などに対する信頼性が評価されているという。
APRESIA Systemsでは今後も継続してローカル5G製品の開発を行っていく。
2021年度中に製品化を予定している次世代製品は、CU/DUに自社製品を採用することで、さらなる低価格化を目指す。
加えて、他社製品との相互接続に対応可能な柔軟性も強化する。「工場など厳しい環境でローカル5Gを利用するには、耐環境に優れたパーツを組み合わせるなど、複数社でシステムを構築することが現実的です。O-RAN準拠であっても、異なるベンダー同士の相互接続は技術的に難易度が高く、柔軟性が重要になります」(渡辺氏)。
さらに、CU/DUの一部機能をFPGA(現場で書き換え可能な集積回路)で処理することで、ソフトウェア処理で発生する遅延を取り除き、超低遅延を実現する。
ローカル5Gの導入を検討しているのであれば、ApresiaAEROシリーズを選択肢に加えることをお勧めしたい。
<お問い合わせ先> APRESIA Systems株式会社 URL:https://www.apresia.jp/form/inquiry.php?type=6 Tel:03-6369-0400 |