AIやビックデータを活用し、社会のあり方を根本から変えるような都市設計の動きやスマートシティの取り組みが、国際的には急速に進展している。
日本国内でもスマートシティのプロジェクトは行われているが、構想段階や実証実験にとどまっているケースが少なくない。
海外が先行している部分もある中で、政府は巻き返しを図るべく様々な戦略を打ち出している。
「統合イノベーション戦略2019」において、「Society 5.0」の先行的な実現の姿としてスマートシティを位置付けるとともに、2019年8月には官民が連携してスマートシティの取り組みを加速させるため「スマートシティ官民連携プラットフォーム」を設立した。
併せて、国家戦略特区の制度を活用し、2030年頃の未来社会を先行的に実現することを目指す「スーパーシティ」構想が動き始めている。2020年5月に「スーパーシティ」構想を含む国家戦略特別区域法等の改正法案(スーパーシティ法案)が成立。スーパーシティの公募は今年4月中旬に締め切られ、専門調査会や国家戦略特区諮問会議を経て、政令閣議決定で5都市(区域)程度が決まる見込みだ。
規制改革で先端的サービス後押し「スーパーシティ」構想がイメージしているのは、AIやビッグデータなどの先端技術を活用し、住民目線で生活全般にわたる課題を解決する「丸ごと未来都市」だ。
従来のスマートシティは個別分野での取り組みが多いのに対し、スーパーシティでは行政手続きや医療、教育など複数分野にまたがって先端的サービスを提供する点が大きく異なる。
複数分野の先端的サービスを提供するのに重要な役割を果たすのが、各分野やデータを連携させるデータ連携基盤(都市OS)だ(図表1)。
図表1 「スーパーシティ」構想の概要(クリックで拡大)
国が推奨する共通のAPIやデータモデルを参照しデータ連携基盤を構築することで、別の都市とのデータ連携も可能にする。国は、各区域に対してデータ連携基盤構築の支援も行う。
先端的サービスを実現するため規制改革も進める。これまでは、事業計画の検討過程において、各省と事業内容をバラバラに調整するため、一部の事業を断念することもあった。
そこで「スーパーシティ」構想では、省庁の枠を超えた一体的・包括的な規制改革を実現する計画だ(図表2)。自治体と事業者、内閣府で構成される区域会議において事業計画と規制改革案を同時に検討し、区域計画の案(通称:基本構想)を作成。内閣総理大臣に対し、区域計画の案を添えて、新たな規制の特例措置の整備を求めることができる。その後、内閣総理大臣は、当該規制の所管大臣に新たな規制の特例措置の検討を要請し、規制所管大臣は特例措置を講ずるか否かについて、特区諮問会議の意見を聴いた上で、通知・公表する。
図表2 大胆な規制改革の実現(クリックで拡大)
スーパーシティに選ばれた都市に対しては、内閣府からの予算面の支援を検討している。加えて、スマートシティに関連のある府省庁事業を集中投資することも考えられており、予算面についても全面的にバックアップする。