―― 2020年4月にMellanox Technologies(以下、メラノックス)の買収を完了し、さらに翌5月にはCumulus Networks(以下、キュムラス)の買収も発表しました。スイッチやNIC(ネットワークインターフェースカード)等のネットワーク機器に加えて、ホワイトボックス向けネットワークOSも手にするわけですが、エヌビディアはネットワーキングの分野で何を目指しているのでしょうか。
ケビン・デアリング(以下、ケビン) エヌビディアがネットワーキングを考える際には、まずAIについて考えます。あらゆるビジネスが今後AIに関連してくるからです。したがって、ネットワーキングのビジネスも“AI化”していくことが我々のビジョンです。
エヌビディア マーケティング担当シニアバイスプレジデント
ケビン・デアリング(Kevin Deierling)氏
なぜAI化が必要なのか。それは、コンピューティングの仕組みとネットワークの役割がこれまでとはまったく変わっていくからです。
ネットワークは巨大化し、データ量もすでに膨大な規模になっています。最早、かつてのように単一のコンピューター/サーバーで扱えるものではなくなりました。コンピューティングの単位が、サーバーからデータセンターにシフトしているのです。つまり、サーバーやデータセンターをつなぐネットワーク全体で、この膨大なデータを相手にしなければなりません。そこでAIが必要になるのです。
―― AIは具体的に何をするのですか。
ケビン これからの世界はネットワークがAIをサポートすると同時に、AIはネットワークをサポートします。
ロボットでも自動走行車でも、医療サービスでもすべてAIが使われます。その際、5G等のネットワークがAIのワークロードをサポートすることになります。
反対に、AIもネットワークの管理・制御に不可欠なものになります。例えば、ネットワークを流れるトラフィックの意味合いをAIが理解し、人手ではできなかった高レベルな判断に基づいて制御します。トラフィックが暗号化されていても、AIならばフローを見ることで、ネットワーク内で何が起きているのかを推論できます。侵入者がデータを盗もうとしている、あるいは輻輳が起きそうといった状態をAIが判断し、自動的に対処できるようになるのです。
CPU、GPUに次ぐ“第3の要素”が登場
―― ディープラーニングやビッグデータ解析などの領域でGPUコンピューティングが活用されています。ネットワーキングの進化においても同様に、GPUが大きな役割を果たすということですね。
ケビン その通りですが、GPUに加えて、“第3の要素”も重要な役割を果たすことになります。
かつてはサーバー内のCPUがコンピューティングをすべて担っていましたが、エヌビディアが推進するGPUコンピューティングがその役割を担えるようになってきました。
そして現在は、3つめの要素が登場してきています。DPU、データプロセッシングユニットです。CPU、GPU、DPUの各プロセッサーがそれぞれ得意なジョブをこなすことで、コンピューティングとネットワーキングを進化させる。これがエヌビディアのビジョンです。
DPUはこれまでCPUで行ってきた様々な処理を担う【クリックして拡大】
―― DPUはどのような役割を担うのですか。
ケビン CPUはアプリケーションを動かし、GPUはAIアプリケーション処理を加速させます。そして、DPUはデータのパケット処理を高速化する、アクセラレーションの役割を担います。