「ローカル5Gには、コストが高いのではないか、運用が難しいのではないかという不安の声がある」――。
新サービスを提供開始した背景について、NEC 新事業推進本部 本部長の新井智也氏はそう述べた。2019年末の制度開始から多くの企業が注目するローカル5Gだが、初期導入コストの高さや、無線システムの構築・運用の難しさにハードルを感じるユーザーは多い。「導入企画から構築、運用保守までサービス型で提供する」ことでこの課題を解決しようというのがNECの狙いだ。
オンライン説明会で新サービスについて説明する
NEC執行役員の網江貴彦氏(左)と、
新事業推進本部 本部長の新井智也氏
具体的なサービスの中身は、下の図表のように、企画・検証段階をサポートする「コンサルティングサービス」、設計・導入を支援する「インテグレーションサービス」、そして、5Gコアネットワークや基地局設備等の機器を運用保守まで含めてサブスクリプション型で提供する「マネージドサービス」で構成される。価格は、前2つが個別見積もり、マネージドサービスは月額100万円からとなっている。
ローカル5Gサービスのメニュー。必要なものを選択的に利用できる
ローカル5Gの初期導入コストは現時点で、システム規模にもよるが数千万円から数億円と言われており、これを「サブスクで提供することで、初期投資を抑えて利用できるようにする」と執行役員の網江貴彦氏は強調。合わせて、通信キャリア向け事業で培ったNECのノウハウや技術を活かし、導入時のコンサルティングや設計・構築、運用保守まで行うことでローカル5Gの普及を推し進めたいという。本年12月から利用可能になる見込みの「Sub6/SA(スタンドアロン)に加えて、サービス型で使えるようにすることで、より利用しやすいローカル5Gを推進していきたい」と話した。
NECはこれを、2019年4月に立ち上げたネットワーク事業「NEC Smart Connectivity」のサービスメニューとして提供する。NEC Smart ConnectivityはLTEやLPWA、Wi-Fiなど、多種多様な通信手段をサブスクリプション型で利用できる“マルチコネクティビティ”型のサービスであり、ここにキャリアの5Gとローカル5Gが追加されるかたちとなった。
クラウド型5Gコアとは
NECのローカル5G関連の取り組みで注目されるのが、「クラウド型5Gコアネットワーク(5GC)」の開発だ。文字通りクラウド上で運用可能な5GCであり、NECは2020年3月にこれを提供開始したが、これまではユーザー側が自らプライベートクラウドやAWS等のパブリッククラウドに導入して運用するかたちだった。
クラウド型5GCの利用イメージとメリット
今回の新サービスでは、NECが運用するクラウド型5GCの機能を“サービス”としてユーザーが月額料金を支払いながら利用できる。「最初はスモールスタートして、徐々に拡大していくような使い方が可能」(新井氏)なうえ、運用はNECが行うためユーザー側の負担も少ない。「マネージドサービスとして保守運用も統合して提供するので、無線システムの運用経験がないお客様でも高品質な機能が利用できる」(新井氏)。
クラウド型5GCの特徴
また、制御信号(Control Plane)と、ユーザーデータ(User Plane)の転送機能を分離するC/U分離方式にも対応しているため、制御信号のみクラウド上の5GCとやり取りし、ユーザーデータはローカルネットワーク内で留めるようなシステム形態も可能だ。User Planeに関しては、専用アプライアンス「BoxタイプU-Plane装置」も用意している。