――放送局をはじめとするM&E業界でVideo over IPへの移行が始まっています。背景には何があるのですか。
マクニカ 船木浩志氏 4K/8Kといった高精細映像を扱う必要性が出てきたことで、従来の放送用ネットワークに限界が見えてきたのが発端です。そこでIP化が進んできたのですが、現在はIP化のユースケースを開拓、M&E業界の多様化を推し進めていく段階に入っています。
IP化がもたらす多様な価値 M&E業界のワークフローが変わる――IP化の先を見据えるフェーズに来ているということですね。
船木 インフラに関しては、これまで専用機器で構成されていた放送システム/ネットワークが汎用化され、さらにクラウド化する流れも出てきました。
エヌビディア 高橋想氏 IP化することで映像データのハンドリングが容易になり、大容量の映像データを素早く処理できる能力をGPUが備えてきています。この流れは最早確定的ですね。
船木 IP化により自由度が増すことで、監視・制御機能をクラウド化してリモートからプロダクションしようとする取り組みも始まっています。
エヌビディア 田口慎氏 こうした仕組みはすでに導入段階に入っています。実際のスポーツイベント等で従来システムとのワークフローの違いや性能の検証が行われています。
図表1 IP化が切り拓く新しい放送の世界
――SDIと同じ性能・信頼性、使い勝手が実現できるという点も重要ですね。
田口 それはもちろんですが、むしろ「IP化すればこんなすごいことができる」という議論こそが重要です。
船木 リモートプロダクションの例では、局側から現地の制御をすることで中継先の人数を最小限に抑えられます。クラウドにマネジメント機能を持っていけば、ワークフローはより大きく変わります。究極的には、自宅からでも業務ができるようになるわけです。
田口 放送の仕組みすべてを高速・高品質なIPネットワークでつなぎ、それらを一元管理するというのが、この先目指すべき世界でしょう。
クラウド化によって、放送機器を持たなくても運用できる可能性も見えてきました。映像データが手元にある必要はなく、データセンター内でワークフローを完結できる仕組みが将来的には出てくるはずです。
それを見据えて、業務のあり方を考え直す時期にきているとも言えます。