<連載>ミリ波のチカラ -超高速通信がもたらす新しい体験-[第7回]5Gミリ波スタンドアローンによるFWAの実力と展開【後編】

5Gで使われる周波数の中でも高速・大容量通信を実現する手段としてミリ波が注目されている。FWA(Fixed Wireless Access)はそのユースケースとして有望視されているものの1つだ。従来のミリ波通信はNSA(ノンスタンドアローン)方式が主流だが、ソフトバンクが商用5Gネットワーク上でミリ波SA(スタンドアローン)運用によるFWA通信を実現した(2025年10月28日報道発表)ことは、実運用フェーズに向けた大きな一歩となる。前回(前編)は、このミリ波SA構成によるFWAの実証実験結果を紹介した。後編では、それに基づいて想定されるサービス展開の方向性について解説する。

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前回(5Gミリ波スタンドアローンによるFWAの実力と展開:前編)は、京セラ製CPEを使ったミリ波スタンドアローン(SA)の性能検証の結果を紹介した。ミリ波基地局とCPEとの距離が200mあるいは1kmを超える環境でも、安定した高速通信が実現できることを確認した。

ミリ波の強みを最大現に活かすため、FWA利用時のCPEの設置位置はLOS(見通し)環境としている。FWAにおいて事前にエリアシミュレーションを実施し、CPEの設置地点を精度よく特定しておくことは、FWAを用いたサービスやソリューション展開を実施するにおいて重要となる。本エリアシミュレーションは、具体的なユースケースに応じた、FWAビジネスの提案ツールとして提供し活用されることを想定している。

本エリアシミュレーションは、直進性の強いミリ波の電波環境を精度よく表現できるレイトレーシング法を採用しており、さらに高精度化するにあたり、弊社が取り組んだポイントについて下記に紹介する。

エリアシミュレーション高精度化のポイント

◆3D地図データの最適化
FWA利用時のCPEの設置位置となる建造物の屋外、屋上、壁面などのLOS環境でのエリアシミュレーションを精度よく実施するには、3D地図データの精度が重要な要素の1つとなる。反射波や回折波を再現し、必要な精度のシミュレーション結果を得ることができる最適な地図精度を試行錯誤し決定している。

◆シミュレーションモデルの最適化
シミュレーションの高精度化を図るためには、シミュレーターにあるパラメータを現実に則したパラメータに適正化する必要がある。

これを考える上で指標にしたのはRMSE(Root Mean Square Error)値である。これは、電測結果とシミュレーション結果の差分を数値化する方法である。RMSE値を見ながら実測値に近づけるようにシミュレーションモデルとその特性パラメータを複数の実地検証データより最適化させ、現実解に近くなるようシミュレーションモデルを学習させた。これにより現実的なシミュレーションモデルへと最適化している。

◆材料物性値パラメータの最適化
次に、集合住宅や一般のビル等で使用されているコンクリートやガラス材、スレート材を用いて垂直偏波や水平偏波の反射角と反射強度についての実測を行い、パラメータとして設定した上で上述したRMSEとの相関を取りながら更にシミュレーションモデルの最適化を行っている。

◆本実証実験でのシミュレーション結果
本実証実験に向け、事前にシミュレーションした結果となる建物側面の電界強度(RSRP)分布を図表1に示す。

図表1 電解強度シミュレーション結果

図表1 電解強度シミュレーション結果

シミュレーションにて特定した複数地点でのRSRPの実測値はシミュレーション値と一致している。今回の実証実験でのCPE設置箇所では、シミュレーション値-74dBmに対し、実測値は-76dBmであった。これらの比較から実測値を捉えた精度のよい結果であることがわかる。

難波晃(なんば・あきら)
京セラ所属。無線通信基地局や端末の無線高周波回路及び無線システム関連を専門として開発に従事。現在、様々な社会課題解決に対し、ミリ波FWAを用いたソリューション展開に向け活動中

早田和樹(はやた・かずき)
京セラ所属。ミリ波車載レーダーや高多層ミリ波パッケージ、5Gミリ波PAAMの開発に従事。現在は、エリアシミュレーションを活用し、誰もが利用できるミリ波通信環境の実現を目指し活動中。「次世代通信を、すべての人へ」

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