緊急事態宣言の解除後、小売・飲食店などにお客が戻り始めた。ただし、第二波の襲来も危惧されるなか、どの業種も「3密」回避は必須だ。入店数を制限しながらの営業が続く。
対策の肝は“密”の可視化だ。これにIoTを活用する動きが広がっている。センサーとAIを駆使して混雑度を把握。来店客への案内まで自動化することで、従業員の感染リスクと業務負荷を低減することができる。
素早く動いた業種の1つが、緊急事態宣言下も営業を続けていたスーパーマーケットだ。例えば、千葉市緑区のフードランドレオ誉田店は5月7日、AIが混雑を判断して入店を制限するIoTシステムの運用を始めた。
出入口にカメラを設置し、AIが映像を解析して入退店者数を計測。ディスプレイに混雑状況を表示し、混雑時には入店規制を案内する(下写真)。
フードランドレオ誉田店の入口に設置されたデジタルサイネージ。出入口に設置したカメラの映像で
入店・退店の人数を計測する。通常時は手指の消毒等を促す案内などを表示し、混雑時には自動的に
「入場制限」に切り替える。なお、映像解析の後に計測データのみがクラウドに送られるため、
来店客のプライバシーは保護される
来店前に混雑状況を確認システムを開発・提供したビズライト・テクノロジー DOOHメディア部の三島康弘氏によれば、非常に安価な製品の組み合わせで実現している。映像は「1万円程度のWebカメラで撮影」し、NVIDIA製小型サーバー「Jetson」内のAIが人数を計測。デジタルサイネージのセットトップボックス(STB)にLTE通信機能を付加し、計測データをクラウドに送って集計して混雑時にはディスプレイの表示を自動的に切り替える。
店内でシステムを完結させることも可能だが、クラウドと連携させた理由は、クラウド上で客数や混雑状況の推移を把握することでJetsonサーバーを人数計測に特化させられることが1つ。もう1つが、来店前の客に情報を開示するためだ。スマホ等でアクセスすれば事前に混雑状況が確認できる。「導入前は隣の敷地まで入店待ちの行列が伸びることもあった」(三島氏)が、これも解消した。
同店では将来的に、来店客の属性情報と売上データの相関を調べ、機会損失を把握するといった用途での活用も計画しているという。
なお、ビズライト・テクノロジーは企画からわずか2週間で本システムを開発した。同社がこれまで手掛けてきた「デジタルサイネージ視聴者の属性をAIで把握し、年齢や性別に合わせたコンテンツを表示する仕組みをベースに開発した」ことが、迅速に開発できた要因だと三島氏は話す。