ローカル5Gの実現に向けた課題などの検討を行う情報通信審議会 情報通信技術分科会 新世代モバイル通信システム委員会は6月1日、ローカル5Gの周波数拡張等に関する報告書案をまとめた。6月26日までパブリックコメントを募集している。
昨年10月の審議再開以降のローカル5G検討作業班の主要テーマは、大きく3つあった。
なかでも最重要議題となったのが、残されたローカル5G向け周波数の4.7GHz帯200MHz幅および28GHz帯800MHz幅(拡張周波数帯)を利用するための共用条件の検討だ(図表1)。
図表1 ローカル5Gの使用周波数帯
まず4.6-4.8GHzは、公共業務用無線に利用されている帯域だ。
かつて全国キャリアへの割当が計画され、2018年に新世代モバイル通信システム委員会において共用検討が行われたが、同一周波数条件では、数十km以上の距離を確保しても広範囲にわたって公共業務用無線局や基地局の許容干渉電力を上回ることが明らかになった経緯がある。このため、同一周波数で5Gシステムと共用する際には、屋内利用に限定する必要があるとされていた。
このときの結果を踏まえ、作業班では今回、屋内利用を前提に4.6-4.8GHzの詳細条件について検討を実施したが、ローカル5G基地局を屋内に設置しても、公共業務用固定局からの干渉により、ローカル5G基地局の許容干渉電力を超過してしまう場合があることが明らかになった。
そこで4.6-4.8GHzについては、市区町村単位で設置可能かどうかの確認を行い、干渉電力超過地点のない市区町村であれば共用可能ということになった。
4.8-4.9GHzの屋外利用条件は?ローカル5Gで期待されているユースケースの中には、防災・災害対応や農業、港湾など、屋外利用がメインとなるものも少なくない。遮蔽物に強く、より広いエリアをカバーできるサブ6の屋外利用ができないとなると、ローカル5Gの有用性は大きく下がる可能性がある。そのため、4.6-4.8GHzが屋内利用に限られる方向性が明らかになるなか、屋外利用もできる新たなサブ6を求める声も高まっていった。
そこで総務省は、当初の割当計画にはなかった4.8-4.9GHzをローカル5G向けに新たに追加した。
同帯域は、公共業務用固定局の帯域に隣接している。屋外にローカル5G基地局を設置する場合、許容干渉電力を超過する地点の有無を市区町村単位で判定。その上で、超過する地点を含む市区町村では①マクロセル基地局の場合は設置不可、②スモールセル基地局の場合は不要発射の強度の値の確認等をすることにより共用可能とされた。
ただ、マクロセル基地局は通信キャリアが数kmという広範囲のエリアをカバーするのに用いるものであり、ローカル5Gで使われる可能性は低い。このため4.8-4.9GHzについては、実質的に厳しい制約なしに屋外利用が可能となる。当然、屋内でも利用できる。
総務省 総合通信基盤局 電波部 移動通信課 課長補佐の大塚恵理氏は、「現行制度でローカル5Gのニーズにある程度応えられるようになった」と手応えを語る。