「東京-大阪間の幹線網では1波長当たり400~500Gbps、数十kmの隣接データセンター間なら1波800Gbpsの伝送が可能だ。お客様からの引きは強く、かなり前向きに検討いただいている」
世界で初めて1波長当たり800Gbpsという超大容量伝送が可能な新世代チップセット「WaveLogic 5 Extreme(以下、WL5e)」を開発したシエナは、3月末にこの新チップ搭載製品の提供を始めた。日本シエナコミュニケーションズの瀬戸康一郎氏は、新製品に対する反応をそう語る。
日本シエナコミュニケーションズ システムエンジニアリング部 ディレクター 瀬戸康一郎氏
帯域需要の高まりを受けて競合他社が“1波600G”の製品を用意するなか、シエナは一歩先を行く800G伝送を製品化した。その理由は、ユーザーのリアルな声に応えるためだったという。
「600Gよりも800Gが欲しいというのが、Webスケール事業者のニーズだ。2020年後半から400Gイーサ(GbE)が普及するとみられるが、その400GbEを2ch、100GbEを8本運べる800G伝送が欲しいという声が強かった」
5Gサービスを展開する通信キャリアからの期待も大きい。米国ではベライゾンやコムキャストがWL5eを使ったフィールドトライアルを開始している。
メトロ・中距離も太平洋横断も “400G everywhere”を実現“世界初の800G”のインパクトは大きいが、WL5eがもたらす価値はそれだけではない。この圧倒的な伝送能力を、近距離のデーターセンター相互接続(DCI)やメトロ・中長距離網、さらに超長距離の海底ケーブル伝送まで様々なケースで活用し、周波数利用効率を向上させることができる。つまり、“どこでも400G”が実現できるのだ。
そのイメージを示したのが図表1だ。
図表1 WaveLogic 5 Extremeのアプリケーション
シエナは2世代前のチップから、光伝送の世界に新たな考え方を持ち込んだ。それまでの光伝送システムは、用途や通信距離に応じて性能の異なる装置を使い分けていた。対してシエナは、同一のチップ/装置で様々なファイバー容量や通信距離に対応できる製品を提供。伝送距離やノイズの多寡に応じて、50G刻みで光ファイバーの性能を引き出せるようにした。
このコンセプトは最新チップのWL5eにも引き継がれている。近距離DCIでは800G、メトロ、中~長距離なら400Gや500/600Gといったように、同じ製品を使い分けられる。1万kmを超える太平洋横断でも、1波長で400~500Gbps伝送が可能だ。場所によって異なる製品を使うよりも経済的である。