ネットワーク監視の世界では現在、「アクティブモニタリング」が主流化しつつある。
企業活動は今や、自社網のようには可視化・制御できないインターネットに大きく依存するようになったが、アクティブモニタリングは、この環境に対応するためのネットワーク監視の仕組みである。インターネットバンキング等に代表されるオンラインサービスやIaaS/SaaS等のクラウドサービスを提供する事業者、さらにそのユーザー企業が、WANやインターネットの状態を監視・管理する目的で採用するケースが増えてきている。
アクティブモニタリングでは、サーバーやエンドポイント端末等で稼働するエージェントソフトがテストパケットを送受信して、能動的に通信性能・品質を評価する。例えば、あるURLにアクセスしてレスポンス時間を測定したり、通信経路を特定したり、経路上のノードごとの遅延やパケットロス等の情報を収集する。
この情報を基に、オンラインサービスの事業者ならば、ユーザーが快適に自社のサービスを利用できているかを判断する。あるいは企業が、従業員がクラウドサービスを使う際の体感品質を調査し、問題点をあぶり出すことができる。
SaaSユーザーの利用が急増このアクティブモニタリングを可能にするサービスを2010年から展開しているのが、米サウザンドアイズだ。世界170都市のデータセンター/クラウドにエージェントを配置。さらに、ユーザー企業の拠点等に置かれるエージェントが集める情報も使って、世界規模でインターネットの状態を可視化している。
サウザンドアイズの画面例。テストパケットの送受信により、インターネットのアクセス経路や障害点等を表示する。何らかの問題が生じているホップ(丸)と経路が赤く表示され、カーソルを当てると詳細情報を確認できる |
特徴的なのは、ネットワーク品質にとどまらず、アプリケーションレベルで体感品質を可視化できる点だ。同社の監視エージェントは、例えばユーザーがSaaSを使う際の操作を真似た疑似パケットを流し、その反応速度等を測定することも可能だ。「アプリレイヤからネットワークまでマルチレイヤでユーザーの体感値を測る。悪化すれば、その原因がネットワークにあるのかクラウドにあるのか、障害が発生している地域まで特定できる」と、サウザンドアイズ・ジャパン代表の尾方一成氏は話す。
また、時間を遡って品質の変化を確認できるため、障害が発生した際に事前事後のインターネットの状態を確認して対処することも可能だ。
従来、同社のサービスは金融業のオンラインバンキングやクラウドサービス事業者がユーザーの体感品質を把握するために用いるケースが多かったが、最近は一般企業の利用も急増しているという。「Office 365等のSaaS利用が増えたため」(尾方氏)だ。