今年4月、ソフトバンクはPHSのテレメタリングプランの提供を2023年3月末に終了すると発表した。街中でPHSを使っている人を見かけることはほとんどないが、法人市場では今なお機器の遠隔監視などで活躍している。
一例がエレベーターだ。日本全国で稼働しているエレベーターは約90万基。閉じ込められたり、故障で停止した際、監視センターに通報するインターホンのネットワークとして、多くのエレベーターにPHSが採用されている。
「テレメタリングプランの終了が正式に発表されて以降、エレベーター業界の関係者から『今後どうすればいいのか』といった問い合わせが相次いでいます」。こう話すのは、MI IoT事業部コンサルティング第1グループ 統括マネージャーの西川昌樹氏だ。
MI IoT事業部 コンサルティング第1グループ 統括マネージャー 西川昌樹氏
IoT分野のSI、インフラ全般を手掛けるMIは、2012年3月の設立当初からエレベーターや自動販売機、コインパーキングなど、PHSを活用した遠隔監視システムを提供している。その一方、早い段階からPHSサービス終了を予見し、3G/LTEにマイグレーションするM2M/IoTルーター「AirREALシリーズ」を展開するとともに、企業などに対し啓蒙活動を行ってきた。
2024年1月にはISDNも終了を予定しているが、AirREALシリーズはISDNからのマイグレーションにももちろん対応する。
PHS(ISDN)から3G/LTEに移行するには、各拠点の設備のIP化やセンター側の既存システムのTCP/IP通信への変換など、既存の設備やシステムを刷新する必要がある。しかし、手間やコストがかかるため、マイグレーションが進まない要因の1つとなっていた。
これに対し、AirREALシリーズは、現場に設置したPHSモデム(あるいはISDNターミナルアダプター)と差し替えるだけで簡単に設備をIP化することができる。システム側についても、サーバーにソフトウェアモデムをインストールし設定すればIP化が完了する。基本的に既存の設備やシステムをそのまま使えるので、導入費用はIoTルーターの機器代のみ。月額利用料もPHSやISDNと比べて半分以下と大幅に削減することが可能だ。
このように安価かつ手軽にマイグレーションを実現できるとあって、AirREALシリーズは発売以来、多くの支持を集めている。小型モデルや車載用モデル、Wi-Fiのアクセスポイント機能を搭載したモデルなど、用途に合わせて豊富な種類が揃う。個別のニーズに対応したモデルが製品化されるケースもあり、海外向けも含めると10種類以上になるという。
このAirREALシリーズに今年5月、新たに「AirREAL-VOICE」が加わった。次ページでは、AirREAL-VOICEの特徴を詳しく紹介する。