インターネットイニシアティブ(IIJ)と台湾のIoTソリューションプロバイダーであるKiwitecは2019年9月19日、LoRaWANソリューションの展開において協業すると発表した。
(左から)キーウィテクノロジー代表取締役社長のピーター・リン氏、Kiwitecチェアマンのジュディー・リー氏、IIJ IoTビジネス事業部 副事業部長の齋藤透氏 |
LoRaWANは、低消費電力かつ長距離通信を特徴とする無線通信技術で、免許が不要な周波数帯域を利用する。Kiwitecは2015年からLoRaWANの成長性や可能性に着目し、同技術に対応した独自のゲートウェイやモジュール、センサーデバイスなどを開発・販売している。
一方、IIJは2016年にIoTプラットフォーム「IIJ IoTサービス」を開始して以降、IoTビジネスを展開してきた。2017年には農林水産省の公募事業として、IoTを活用し水田の水管理コストを削減することを目指した実証実験に取り組んでおり、KiwitecのLoRaWANゲートウェイを設置し、水田センサーからのデータをLoRaWANで収集するシステムの研究開発を行っている。
この実証を通じて、両社はIoT分野におけるさらなるLoRaWAN活用を推進すべく協業に至ったという。今回の協業により、KiwitecのLoRaWANゲートウェイに対し、「ビルトインサーバ機能」と「SACM(Service Adapter Control Manager)機能」という2つの独自機能を追加する。
ビルトインサーバ機能は、LoRaWANを利用する際に必要となる「ネットワークサーバ機能」を提供するもの。センサーやゲートウェイなどの端末管理および通信の暗号化・復号化を行うための同機能を、LoRaWANゲートウェイ機器そのものに実装する。これにより、システムをシンプルに構成できるようになるとともに、独立したネットワークサーバが不要になり、運用負荷や構築費用を大幅に軽減することが可能になるという。
「ビルトインサーバ機能」のイメージ |
SACM機能は、IIJが開発・提供するネットワーク機器の集中管理サービスで、機器の自動接続と一元管理を遠隔から実現するマネージメントシステム。LoRaWANゲートウェイに実装することで、ゲートウェイの設定の自動化やファームウェア更新、各種オペレーションを遠隔から行え、運用管理の負担が軽減される。
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SACM機能により、遠隔から各種オペレーションを行える |
IIJでは、これら独自機能を追加したLoRaWANゲートウェイのほか、Kiwitecのセンサーデバイスを販売する。今後、レンタルでの提供も予定している。IIJ IoTビジネス事業部 副事業部長の齋藤透氏は「SIMを使ってIIJ IoT センサーと連携し、センサーから収集したデータを蓄積することも可能」と説明する。
IIJでは、Kiwitecのゲートウェイ以外にセンサーデバイスも販売する |
BluetoothやWi-Fi、Sigfoxなど様々な無線通信規格が存在するが、そうした中でLoRaWANは「ポンと置いても、1kmくらいはカバーできる点が強み」(齋藤氏)であり、具体的なユースケースとして、農業の他にビルや店舗などを想定しているという。
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農業や工場、店舗などのユースケースを想定している |
このうち店舗については、2020年6月に義務化されるHACCP(危害要因分析重要管理点)対応に向けて、飲食店やスーパーマーケットなど「食」に関わる業種で衛生管理への対応強化が必須となる。センサーの数が膨大なためWi-FiやBLEでは対応が難しい大型店舗も、LoRaWANなら効率的にカバーできるという。