国内初のローカル5G実験――見通し次第で28GHz帯で400Mbps前後も

住友商事やCATV事業者が、ローカル5Gの実証実験を開始した。様々な環境下での電波への影響を検証する。屋外では見通しが良ければ、400Mbps前後の高速通信も可能だ。

5Gを自営無線として利用できる「ローカル5G」が、企業や自治体の関心を集めている。そうしたなか住友商事は6月下旬、同社およびCATV事業者51社が出資する地域ワイヤレスジャパン等とともに、国内初となるローカル5Gの実証実験を開始した。

第1弾として、愛媛県松山市で7月上旬までの約2週間にわたり、ケーブルテレビインフラとローカル5Gインフラを組み合わせた屋外での実証実験を実施。7月中旬からは、東京都練馬区において同様の実験を行っている。ローカル5Gに割り当てられる28GHz帯を使い、屋外での距離や見通しの違いによる電波の飛び方への影響や4K/8Kの高精細映像の伝送可能性を調べるのが目的という。

図表 ローカル5G実証実験の全体概要
図表 ローカル5G実証実験の全体概要

無線事業を強化するCATV事業者全国に約500社あるCATV事業者の多くは、地域に密着した情報を配信するコミュニティチャンネルや多チャンネル放送に加えて、IP電話やインターネット接続、無線など幅広いサービスを展開している。

なかでもMVNOやWi-Fi、地域BWAなどの無線サービスは、業界団体である日本ケーブルテレビ連盟が先頭に立ち、各社の中核事業に取り込もうと推進しているところだ。

とはいえ、CATV事業者は基本的に地域に1社しかなく、単独では交渉力等に限界がある。そこで、CATV最大手のジュピターテレコムに折半出資している住友商事や主要なCATV事業者を中心とする地域ワイヤレスジャパンが窓口となり、MVNOの回線や端末調達などの交渉を行ったり、地域BWAの成功事例を横展開している。

住友商事 メディア事業本部ケーブルテレビ事業部長で、地域ワイヤレスジャパン代表取締役社長を務める小竹完治氏はローカル5Gについて、「地域の課題解決や活性化を目的とした制度であり、地域に密着したCATV事業者こそがその役割を担っていけるのではないか」と話す。

CATV事業者がローカル5Gの用途として想定しているのが、FWA(固定無線アクセス)サービスだ。

「ラストワンマイル」を有線から5Gに置き換えることで宅内への引き込み工事が不要となり、スピーディかつ低コストに導入することが可能になる。有線の場合、解約時にも引き込み線を撤去する工事が発生し、撤去費用は業界全体で年間数百億円に上るといわれるが、そうしたコストも不要になる。「5GのNSA(ノンスタンドアローン)方式の装置は現状では高額だが、エコシステムが回り始めれば値段も下がるだろう」と小竹氏は見る。

一連のコスト低廉化が実現すれば、CATVの利用料に還元できる可能性が高い。無線であれば工事に立ち会う必要がないので、利便性も向上する。「ローカル5Gは、CATV事業者と利用者の双方にとってメリットがある」(小竹氏)というわけだ。

最近の集合住宅は高層化や大規模化が進んでおり、光ファイバーの敷設が難しいケースが増えている。建物の外にローカル5Gの基地局を設置し、マクロセルで複数の棟をカバーしたり、マッシブMIMOアンテナを用いて1棟分の回線を確保することでCATVサービスを提供し、新たな利用者を掘り起こしたいという側面もあるという。

月刊テレコミュニケーション2019年8月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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