迫る長期戦、新たな武器はSigfox――埼玉県飯能市が“IoT罠”で獣害対策

埼玉県飯能市と京セラコミュニケーションシステム(KCCS)が、Sigfoxを活用した“IoT罠”による獣害対策に乗り出した。住民生活を脅かす害獣との長期戦を勝ち抜く武器として、対策隊は大きな期待を寄せる。

農林水産省によれば、2017年度の野生鳥獣による農作物被害は約164億円にのぼる。被害額は5年連続で減少したものの依然として高い水準にあり、営農意欲の減退など数字に表れない影響も無視できない。

加えて厄介なのが、被害は農林業に留まらないことだ。埼玉県飯能市産業環境部 農業振興課 鳥獣被害対策室の室長を務める森田高広氏は、「近年、生活面での被害も非常に増えてきた」と話す。イノシシや鹿、アライグマ等が住民の生活圏にも出没。深刻な被害が出始めてきた。

埼玉県飯能市 産業環境部 農業振興課長 兼 農業委員会事務局長の木﨑晃典氏(右)と、産業環境部 農業振興課 鳥獣被害対策室 室長の森田高広氏
埼玉県飯能市 産業環境部 農業振興課長 兼 農業委員会事務局長の木﨑晃典氏(右)と、産業環境部 農業振興課 鳥獣被害対策室 室長の森田高広氏

行政の最重要課題の1つに例えば山間地域では、イノシシや鹿が斜面を通る際に岩や土砂が崩れ、住宅地に落下。庭先の草花が食べられるケースも頻発している。昨年には、鹿の往来によって市道ののり面が崩れ、道路公園課に整備要請が来た。「2014年ごろから生活圏での被害報告が増えた」と農業振興課長 兼 農業委員会事務局長の木﨑晃典氏は語る。他にも住宅や市施設への侵入、自動車や列車との衝突なども発生。鳥獣害対策は、「生活を守るための最重要課題の1つに位置づけなければならなくなった」。

抜本的な対策に乗り出したのが2017年4月のことだ。それまでは農林業被害という観点から農林課の職員が対応していたが、体制を見直し。市の正規職員74名からなる組織横断的プロジェクトチームとして飯能市鳥獣被害対策隊が発足した。中心となった木﨑氏も同年に狩猟免許を取得。捕獲従事者として活動しており、月に15頭も捕獲することがあるという。

鳥獣害に悩む自治体は多く、飯能市の対策隊立ち上げのニュースは当時、全国の自治体から関心を集めた。

月刊テレコミュニケーション2019年6月号から一部再編集のうえ転載
(記事の内容は雑誌掲載当時のもので、現在では異なる場合があります)

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