2016年12月にBluetooth 5.0が正式採択されてから約2年、2019年1月に最新のコア規格Bluetooth 5.1が発表された。
業界団体のBluetooth SIG(Special Interest Group)は2019年3月8日に報道機関向けの説明会を都内で開催。Bluetooth関連市場の現状と、新規格である5.1の主要機能について解説した。
まず市場動向について、Bluetooth SIGでAPACデベロッパー リレーションズ マネージャーを務めるカイ・レン氏は、2010年に登場したBluetooth Low Energy(Bluetooth LE)、そして2017年7月から仕様に加えられたBluetooth Meshによる新市場の開拓が進んでいることを紹介した。
Bluetooth SIGがターゲットとする新興市場とユースケース
調査会社ABIリサーチによれば「2018年のBluetoothデバイスの出荷台数は約40億台。2022年には年間で52億台ものデバイス出荷が予測されている」(同氏)。また、Bluetooth LEを使った位置情報サービスの市場も急成長しており、同社が2018年に行った最新の調査では、この分野だけで2022年には年間4億台を超えるBluetooth製品が出荷されると見込まれている。
Bluetooth Meshはその名の通りメッシュ型のトポロジーを可能にしたものであり、これにより、Bluetooth LEによる位置情報サービスの適用領域がさらに拡大。ナビゲーションや道案内、モノの探索や資産追跡といったアプリケーションに加えて、照明や空調設備等の遠隔制御や監視、自動化システムへの適用も進展しているという。「我々が新興市場として捉えているスマートビルディングやスマートホーム、スマートインダストリーといった分野でも採用が広がっている」(カイ・レン氏)。
Bluetooth SIGでAPACデベロッパー リレーションズ マネージャーを務めるカイ・レン氏
Bluetooth位置情報サービスの“現在”をおさらい
この位置情報サービスをさらに進化させる新機能が、Bluetooth 5.1の目玉である「方向検知」機能だ。その名の通り、Bluetooth LEタグを付けたモノや、スマートフォンの方向を推定できるようにする機能である。
まず、Bluetooth位置情報サービスについておさらいしておこう。
現在のBluetooth位置情報サービスは、受信信号の強度(RSSI)によって対象物との距離を推定し、その位置を割り出している。
例えば、財布にタグを取り付けて、置き忘れた場合にスマホアプリでその位置を探すというアプリケーションがある。この場合、タグとスマホとの間で通信し、そのRSSIによって距離を推定するわけだが、スマホ側で特定できるのはあくまで一定の範囲内にタグ(つまり財布)があるか否かだ。ユーザーはその情報から「財布が近くにある」ことを推定できるに過ぎない。
RSSIによる測位システムのイメージ
もう1つ、ビルや倉庫、工場といった施設全体にBluetoothのロケーター(受信機)を取り付ければ、その中を移動するモノ(タグ)やヒト(スマホ)の位置を測ることも可能だ。3台以上のロケーターが同一タグから信号を受信すれば、三辺測量によってその位置を推定することができる。現在ではメートル単位の精度で測位が可能だ。
今回加わった方向検知機能は、RSSIによる測位と組み合わせることで、こうした位置情報サービスを大きく進化させる。