NTTコミュニケーションズは2017年から、WebRTCプラットフォーム「Enterprise Cloud WebRTC Platform SkyWay(以下、SkyWay)」を提供している。
WebRTCとは、Webサイトやアプリケーションにビデオ通話等のリアルタイムコミュニケーション(RTC)機能を組み込むことができる標準技術だ。開発者はSkyWayを利用することで、WebRTCに必要なサーバー群の設置や運用を行うことなく、NTTコムが提供するSDK(ソフトウェア開発環境)を使ってサービス開発に専念することができる。
SkyWayを使用したWebRTC通信のイメージ
技術開発部 Webコアテクニカルユニットリーダ/担当課長の大津谷亮祐氏によれば、「SkyWayが面倒なことはすべて引き受けるので、数行のソースコードでOK。2017年の正式サービス開始以来、5200以上のアプリで使われている」。その用途は幅広い。オンライン英会話の最大手であるレアジョブ、オンライン診療サービスのCLINICSのほか、通訳、遠隔作業支援、コンタクトセンター、低遅延ライブ配信などでも実績がある。
品川区立浜川中学校では、生徒がフィリピンの教師に英語を教わるのにSkyWayを利用しているそうだ。こうした教育現場での採用も広がっており、「全国で2000から3000の生徒がSkyWayを使っている」(同氏)。
WebRTCのさらなる普及へ“2つの課題”
このように、さまざまなオンラインサービスでの利用が広がっているWebRTCとSkyWayだが、大津谷氏によればSkyWayにもまだまだ課題があるという。
NTTコミュニケーションズ 技術開発部
Webコアテクニカルユニットリーダ/担当課長の大津谷亮祐氏
1つは、対応デバイスの問題だ。
従来、SkyWayで音声・ビデオ通話が行えるのはWebブラウザとiOSアプリ、Androidアプリ間に限られていた。IoT機器などの他のデバイスでは利用できなかった。
これを解決するため、NTTコムは2018年6月に「WebRTC Gateway」を公開。同年8月から試験提供を開始した。
WebRTC Gatewayはブラウザ以外からでもSkyWayを利用できるようにしたもので、これにより、監視カメラや家電、ロボット等の多様なデバイスで映像・音声その他のデータを送受信することができる。例えば、Webブラウザから監視カメラや家電をコントロールしたり、そのデータを取得するなどだ。
そしてもう1つは、WebRTCでやり取りされる映像・音声をクラウドに送信するという使い方に対応できていなかったことだ。パブリッククラウドのストレージにデータを送って録音・録画する、あるいは、クラウド上で提供されている音声/画像認識AIや翻訳AIサービス等を使って処理することができなかった。
これを可能にするため、今回、様々なクラウドサービスとSkyWayを連携させるための新たな機能拡張キット「Media Pipeline Factory」を開発。2019年1月23日から無償トライアルを開始する。
「Media Pipeline Factory」のイメージ
すでにSkyaWayを利用している企業も含め、10社以上と共同で実証実験を行う予定だ。